最近「先生の所では裏ハムラでCPFでやってますか?」とか「裏ハムラのときにどこを移動しますか」とか聞かれることが増えました。
誰が言い出したのか、またマニアックな知識を身に付けた人がいるなと思っています。
CPFという単語を覚えても、なかなかそれが何なのかを理解するのは難しく、また何に使うのか、何がいいのかも分かりにくいのではないでしょうか?
そこで今回は基本的なCPFの解説とハムラ法におけるその利用法について解説します。
1,CPFとは
CPFとは目の下の膜様の構造物で、眼窩脂肪の後方にある膜です。下の図の黄色で囲んでいる「capusulopalpebral fascia」がCPFです。図の中の黄色いモコモコしたやつが脂肪(眼窩脂肪)です。
*引用:Fat Preservation Technique of Lower-lid Blepharoplasty. BC Mendelson, Aesthetic Surg J 2001;21:450-459.
ちなみに脂肪(眼窩脂肪)の前面の膜を眼窩隔膜といい、CPFが後ろから合流してくるところで上側と下側に分かれます。
*引用:Fat Preservation Technique of Lower-lid Blepharoplasty. BC Mendelson, Aesthetic Surg J 2001;21:450-459.
正面から見た状態ですが、右側が目頭側(鼻側)、左が目尻側になります。
黄色が先ほどのCPFが後ろから合流してくる部分、赤いのが眼窩角膜の上側と下側です。
英語でreinforcedとありますが、CPFは合流後に上に向かっていくので上側が分厚く強い部分になります。
2,CPFを含んで移動固定すれば何がいいのか?
CPFは眼窩角膜の下側よりも強い膜になります。
ですので、CPFやCPFを含んだ上側の眼窩角膜で脂肪を覆いながら移動してあげることで再発しにくい強固な支持が得られ、再発しにくくなるのではないかという考えです。
また、脂肪単体を移動するよりも膜で包んであげた方がスムーズな面になるのできれいに仕上がるのではないかという意見もあります。
3,再発は抑えられるのか?
まず、再発となると10年以上の状態を知りたいのではないでしょうか?残念ながら、目の下の手術後の再発に関して、数年ならまだしも長期にわたる再発率やその程度などのキチンとしたデータはないのが現状です。
恐らく今後も出てこないのではないかと思います。
なぜなら、例えば100人位を10年、15年追跡しようとしてもかなりの手間が掛かりますし、連絡も取れなくなります。
これは病気の患者さんにおいても同様の事が言えます。良くなってしまう症状では長期経過を追うのが困難なのです。
3-1、様々な報告例
①de la PlazaやMendelson BCがCPFを使った、手術の発表しています。それらはCPFという硬い部分で脂肪を押し込めば出ていた脂肪が引っ込んで目の下のたるみが良くなるという手術です。
手術中微妙な脂肪切除も含まれるのですが、これらの手術ではたるみが解消します。
つまり、眼窩隔膜の弱い部分より眼窩隔膜の強い部分やCPFでカバーしたほうが脂肪の圧出に耐えやすいと想像できるわけです。
②例えば脂肪移動ではなく、脂肪温存+リペア(CPFや眼窩角膜で脂肪をもとの位置に押し込む)という方法で
- Mendelsonは3年間の経験で再発は1例
- delaPLAZAは2年間32例の経験で再発は1例
- Sensozは眼窩隔膜という表記だが、平均5年間の経過観察で再発はなかったとしている。
上2つに関してはに関しては平均観察期間不明。という報告があります。(皮膚側から)
③Parsaは片側を通常の脂肪切除、もう片側をCPFによるリペアで手術した経過を発表しています。
平均11年の経過観察でただの脂肪切除の場合8/26(30.8%)に対してCPFリペアの場合2/26(7.7%)で再発が起こったとしています。CPFの場合は外側のみの再発。
4,まとめ
以上より裏ハムラ法で修復する場合でもCPFや眼窩隔膜でカバーしながら脂肪を移動したほうが再発を防止できるのではないかという考えです。
しかし、CPFを移動する場合に下げ過ぎるとタレ目の原因になる場合があるります。ほとんどの場合は自然に軽快します。
現在で多くの先生がCPFや眼窩角膜の硬い部分を一緒に脂肪と移動しているのではないかと思います。
「うちのクリニックではCPF法を行っていて、他院では行っていません」などと宣伝したりする医師もいるかもしれませんが、そもそもどうやって数あるクリニックの医師の方法を知りえることができるのでしょうか?
*そもそもCPF法なんて言いませんが
「書いてない」=「行っていない」ではありませんので、CPFがどうのこうのに拘ることはなく、ご自身が一番いいなと思った医師で手術を受けるのが良いのではないでしょうか。