注意!目の下の脂肪注入をお勧めできない理由

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【著者】渋谷高野美容医院
院長:高野 洋一

目の下の脂肪注入はお勧めできない明確な理由があります。少なくてもファーストチョイスの選択肢になることはないと考えます。

今回はなぜ目の下の脂肪注入はお勧めできないのか?どうして広く行われているのか?を解説してきます。

*お勧めできない部位は目の下の内側部分1/3くらいの範囲です。

1,お勧めできない理由

目の下といっても内側の部分です。瞳孔より内側と思ってください。

なぜかというと、そこの部分は筋肉が直接骨に付着しており、脂肪が入る余地がないからです。

どういうことかというと、目の下のくぼみ部分(内側)はtear throughと呼ばれており、加齢とともにへこみが目立ってきます。

へこみの部分に何かを入れて膨らませるのは、よくある方法なのですが、ボリュームを出す場合は脂肪層や骨の上に入れることが多いです。

ただし、目の下の内側の部分は脂肪層がほとんどありません。皮膚ー筋肉ー骨という構造になっており、筋肉も骨に直接付着する部位なのです。

なので理論的にココに脂肪を注入するには無理があります。

目の下の解剖を詳細に調べたHaddockら、が記すようにtear troughの部分は以下のようになります。

「Along the tear trough, the orbicularis muscle is attached directly to the bone」「The skin overlying the palpebral orbicularis (eyelid skin) was thin, with no subcutaneous fat.」

「tear troughに沿って眼輪筋は直接骨に付着し、皮膚は薄く皮下脂肪もない部分」というように訳せます。

実際の写真で見てもお分かりいただけると思います。下の写真の黄色い部分が脂肪で赤い部分が筋肉です。筋肉が直接骨に付着しているのが分かると思います。

2,脂肪を注入するとどうなるのか?

では、この脂肪のないところに脂肪を注入するとどうなるのでしょうか?以下の3つが考えられます。最悪は2のパターンです。

1) 吸収されてボリュームを保てない

注入した脂肪が無くなってほぼ意味がなかったという場合。

2)筋肉内に脂肪が残り、膨らんだり、笑うと強調される

筋肉はゴムのようにきれいに伸びたり縮んだりします。その中に動かないものがあると、笑った時(筋肉が縮んだ時)ポコッと膨らんで変に見えるという事になります。

下の写真のように笑うと膨らむという事が起きてしまいます。このようにシコリが出来るとかなり大変です。シコリに関しては後述します。

3)AとBの間で、ギリギリ中途半端なボリュームを保てるパターン

注入した脂肪の多少の残りはあるものの、変に膨らんだように見えないパターンです。ただ、脂肪注入は残す量を調節できるわけではないので「たまたま」という要素も含まれてきます。

そして、このパターンなら綺麗に見えるという訳でもなく、人によっては十分な量を確保できていない事になります。

脂肪注入が手軽で見栄えも比較的良くなるという主張の論文もあるのですが、静止画の評価しかなく、動いているときが問題になることが多いのであまり当てにならないのではないかと考えます。またその文献でも静止画でもそんなに綺麗か??という内容です。

参考:Chiu, CY

Treatment of Tear Trough Deformity: Fat Repositioning versus Autologous Fat Grafting.

Aesthetic Plastic Surgery volume 41, pages73–80 (2017)

3,脂肪注入なら量を自由に注入できるという嘘

また、裏ハムラではそこにある脂肪しか使えないので目の下の窪みを修正しきれない場合もあり、脂肪注入であれば相当量の脂肪を注入できるなどというのも大きな疑問です。

確かに裏ハムラでは修正しきれない場合もありえるでしょうが、特に内側(目頭側)には説明したように脂肪は入れるのが困難なのです。

また、裏ハムラで修正しきれなものを脂肪の量だけの問題と結論付けるのは安易すぎます。裏ハムラで修正しきれない理由はその他にも色々あります。

外側であれば脂肪注入は可能ですが、それでも1度に入れれる脂肪量には限度があります。これは脂肪豊胸でも議論されたことであり現在多くの脂肪を同一部位に注入することはないです。いくらでも脂肪を注入して好きに大きさを整えられる訳ではないのです。

脂肪注入は手軽で良い方法です、私も額や頬の注入を良く行っています。ただし、目の下に関しては主流となっている脂肪移動にとって代わるものでもなく、シコリや変な膨らみが起こったときの対処も非常に大変です。

4,脂肪注入後にシコリが出来たらどうなるか?

シコリの定義というものはありませんが、胸の脂肪注入だと上手く生着しないで死んだ脂肪が残ってしまったものをシコリと言う事が多いです。

ただし、目の下の場合はその脂肪が生きて生着していようがある程度の大きさのボリュームとして存在すると笑うと膨らむなど、変に見えます。シコリだろうが普通に定着してようが、そんなことは関係なく変に見えたら嫌ですよね。

このようになってしまうと治療は非常に困難です。目の下のシコリ切除は治療してくれるクリニックが少ないのも難点です。裏ハムラや表ハムラをちゃんと手術できる医師であればシコリ切除の手術自体は出来ると思いますが、面倒だからやらないのか、出来ないのか、とにかく治療してくれるクリニックが少なくなります。

そして、私の知る限り目の下のシコリ切除をしている先生の多くが、目の下は脂肪注入ではなく裏ハムラで治療する先生です。

  • 目の下の脂肪注入をしている先生はシコリになっても効果的な治療はしてくれない場合が多数です。
  • 簡単な方法で行ったのに、より難易度の高いリスクのある方法で治療しなければならなくなります。

5,なぜ日本では脂肪注入が広く行われるのか?

主に3つの理由があると考えられます。世界的には目の下の若返り手術と言えば脂肪移動手術(日本でいう裏ハムラ法)が標準的な方法だと認識しています。目の下の手術は英語ではlower blepharoplastyといいますが、文献検索等でも多くが脂肪移動に関するものです。

5-1,手技習得までの期間が短い

脂肪注入は注射のようなものですし、注入用の脂肪を採取する脂肪吸引も大量でなくてもいいので比較的短期間で習得可能です。

また、目の下の脱脂(経結膜脱脂)と共に行われることが多いですが、脱脂も裏ハムラ法に比べてかなり短期間で習得可能です。

ですので、早く習得させていっぱい症例をやってもらうために大手クリニックさんで行われる方が多いと思います。

5-2,脂肪注入のグレードを付けて値段をアップする

脂肪を定着させるための注入法はどの方法も基本的には効果が変わりません。それでも○○法がいいなどと言って高額な値段で提案するクリニックがあります。

要するにクリニックにとって利益にしやすいという事です。最近は裏ハムラにも色々不要なオプションを付ける事があるようですが。

6,番外:おでこも脂肪がないのでは??

おでこも骨の上に脂肪層などがほとんどなく脂肪を注入するのには無理があるのでは?と思われる方もいるかもしれません。

しかし、額の筋肉は額全体の骨に直接付着しているわけではないのです。骨と筋肉の間は非常に疎な結合組織で埋まっています。つまり注射針などが入り込むスペースがあります。

ですので、筋肉の下に脂肪やヒアルロン酸を注入することにより綺麗に入れることができます。もし、中途半端な注入で筋肉内に入ってしまうと、額を動かしたときにボコボコします。

7,まとめ

以上より、目の下特に内側1/3の所への脂肪注入はお勧めしません。まだヒアルロン酸の方がトラブルがあっても溶かせるのでベターだと思います。

ただし、しっかり治そうと思うと裏ハムラ法で脂肪を移動してあげるしかないでしょう。

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