
脂肪注入やFGF注射によって目の下にシコリが出来てしまうことがあります。
シコリができると真顔ではよくても笑うと変に膨らんで見えたり、クマ治療をしたのに治っていないように見えたりします。
これらの状態が非常に気になるという方はいますが、簡単に治すことは難しい場合もあります。
今回は目の下のシコリできる理由やパターン、治療方法について解説していきます。
目次
1,目の下のシコリの2つのパターン
目の下のシコリには2つのパターンがあります。目の下の骨(正確にはtear troughという凹み)よりも上側にシコリができるパターンと下にシコリができるパターンです。
tear troughとは目の下の凹みの部分で下の図の位置です。
黄色矢印:tear trough 凹みの位置
赤線:骨の位置
1-1,tear troughより上にシコリができる例(パターン1)
tear troughというのは目の下の骨の縁よりもやや下に存在します。骨の縁を持ち上げようと脂肪などを注入してしまうと、そのままクマが余計に増悪したようになってしまいます。
解剖学的には眼窩角膜の前面に脂肪などが注入されてしまった状態です。
ですので、クマ治療手術と同時に行ったのに全然良くなった感じがしないように見えます。
下の写真の方は脂肪注入だけの例ですが、クマが悪化したようになったということです。
術前:ただ単にクマがあるように見えますが、脂肪注入によるシコリによってできています。
術後:シコリを切除して脂肪移動という処置を加えています。
1-2、tear troughより下にシコリができる例(パターン2)
これは上の例よりも下側に脂肪などが注入された場合です。
この場合は目の下の筋肉(眼輪筋)の中に脂肪が入った状態になります。この場合は、真顔では気にならないことが多いですが、筋肉の中にシコリがありますので動く(笑う)とポコッと変な膨らみが生じます。
下の方は真顔では問題ありませんが、笑うとポコッと膨らんでいます。
術前:笑うと不自然な膨らみが出ます。
術後:シコリを切除して、無くなった脂肪で組織を補充しています。
2,なぜシコリが出来てしまうのか?
特に脂肪注入は広く行われていて満足度が高い手術です。ではなぜシコリが出来てしまうのでしょうか?
特にパターン2の場合ですが、理由は目の下(特に内側)が特別な構造を持っているからです。具体的に言うと、
- 皮膚が薄く奥のものが目立ちやすい
- 皮下脂肪がないので、脂肪を入れるスペースがなく、①と同様に奥のものが目立ちやすい
- 目頭側は筋肉が直接骨に付着しており、脂肪を入れると必然的に筋肉内に入ってしまう。
という理由があります。
これらは目の下を詳細に解剖して報告している、Haddock先生の報告にも以下のようにあるようにあります。
「Any attempts to place fat or filler deep to the muscle along the tear trough are probably, in actuality, placing the material within the muscular origin of the orbicularis.」
「脂肪やフィラーをティアトラフに入れようとすると、筋肉内や筋肉の付着部に入るだろう」
筋肉内に入った脂肪は真顔ではそんなに気になりませんが、笑うとポコッとします。
霜降り牛のようにかなりまばらに少量では問題にならないでしょうが、それでは十分なボリュームを確保することはできませんし、そもそも脂肪注入で定着後の量を正確に狙うのも困難です。
そして、手術後しばらくしてから症状が気になってくる人もいます。FGFも同様で脂肪様のしこりが筋肉内に出来ます。
3,目の下のシコリの治療法
この記事に辿り着いた方であれば他でも目の下のシコリについて調べていることと思います。
しかし、目の下のシコリを治療しているクリニックは決して多くはなかったでしょう。なぜなら非常に難しいからです。
治療法としては以下のようなものが挙がりますが、切除以外に効果を出すことは難しいと思います。
- 脂肪溶解注射
- ステロイド注射(ケナコルト)
- 抗がん剤の注射
- 切除
やはり根本的には切除しないと取れないですが、やってくれるところも少ないです。
しかも、ビフォーアフターの写真も少ないです、3-6か月後の状態を確認したいと言っても数が少ないです。
4,シコリ切除の難しさ・合併症
上記のように切除が基本的な治療になりますが、なかなか一筋縄ではいかない治療です。
解説してきたパターンの1番、シコリがtear troughよりも上にある場合ですと、比較的簡単にシコリは取れますし、術後の経過も軽い場合が多いです。
しかし筋肉の中に入っている場合は非常に難しくなることも多くあります。
4-1,どこまで良くなるか?!
基本的にはシコリを切除することで変な膨らみは無くなる場合がほとんどです。
ただし、少し見た目の膨らみが残る場合もあり、それがシコリの取り残しなのか、膨らみの状態がクセになっているのかなど判断の難しい場合が多いです。
4-2,凹まないか?!
シコリのボリュームが無くなるわけですから真顔では凹みが出てくる可能性があります。
凹みの予防のために別の眼窩脂肪と呼ばれるものを移動することも行いますが、脱脂されていることも多々ありボリュームとして不足する場合もあります。
4-3,たれ目、笑いにくい
シコリが筋肉内にある場合は特に術後の炎症が強く起こります。その結果、目の下が引っ張られてたれ目になったり、笑いにくいという状況が起きます。
ピークは1-3週間ですが、すぐに治るわけではない場合もあり半年やそれ以上時間が必要になることもあります。
4-4,そのほかの一般的なリスク
その他、腫れなどのダウンタイムや術後のリスクは目の下の手術、ハムラ法や裏ハムラ法と同じようにあります。
5,まとめ
ここまで解説してきたように目の下のシコリは非常に厄介です。
そもそも目の下(内側)は脂肪層がなく、脂肪を注入してボリュームを確保することに無理があります。最近は脂肪注入よりもハムラ法が増えてきたためシコリに悩む方も減っていくとは思いますが、このような難しいトラブルがあるのにわざわざ目の下の脂肪注入やFGFする必要ありますか??