ワキガは、常に臭いが気になったり、周りの人を不快にさせてしまうのではないかと心配したり、洋服の黄ばみが恥ずかしかったりと、日常生活や仕事にも大きな支障をきたしてしまいます。
しかし、美容クリニックなどの治療費は高額であるため、保険適応で安く治せるのなら治療を受けたいとお考えの方は多いはずです。
ただ、どうすれば保険で治療を受けられるのか、保険と自費でどんな違いがあるのか、自分は保険適応されるのかが分からず、なかなか受診するに至らないという方は少なくありません。
今回は、保険適応されるための条件や、保険治療のメリット・デメリットなど、ワキガを保険で治療するために知っておくべきことをお教えいたします。
また、ワキガの治療法は保険適応ではない方法もいくつかあり、ご自分の希望やライフスタイルに合わせて、治療法を選ぶこともできます。このページでは、ワキガ治療のすべての方法や特徴を比較・解説していますので、全てお読み頂ければあなたにとって最適な治療法がお分かりになるはずです。ワキガでお悩みの方は、ぜひ参考にして下さい。
目次
1.そもそもワキガとは
ワキガとは簡単に言うと腋が臭いという事ですが、玉ねぎ、鉛筆の芯、カレー、すっぱい、生乾きの雑巾、チーズのような発酵臭などと言われることが多く、人によって臭いが違ってきます。つまり、腋から汗とは違った臭いがする事です。
ワキガの臭いは、腋に存在するアポクリン腺というものからの分泌物が、皮膚の上の雑菌によって分解されて臭い物質へと変わり発せられたものです。
アポクリン腺とは別に汗を出す、エクリン腺というものも腋には存在しますが、エクリン腺から分泌される水分に富んだ汗と混じることによって臭いが強くなり、周りに届くようになります。
ワキガの原因に関しては「ワキガの原因ってなに?ワキガの人が行うべき正しい対処法」をお読みください。より詳しくワキガの原因について解説しています。
2.ワキガ治療が保険適応になる基準
ワキガは病気なので健康保険で治療を受けることが可能です。しかし、ただ汗を減らしたいとか、臭いがする気がする…というだけでは健康保険で治療を受けることが出来ません。きちんと診断してもらう必要があり、治療法も限られています。
2-1.健康保険を扱っている病院やクリニックで受ける
普通の病院であれば健康保険を扱っていますが、美容クリニックの中には完全自費診療のみで、健康保険を扱っていないクリニックもあります。
保険で治療を受けるためには、当たり前ですが、健康保険を扱っている病院やクリニックに行く必要があります。
美容外科と標榜しているところでも保険を扱っているところもありますし、形成外科にいくのも良いでしょう。
2-2.医師からワキガと診の断を受ける
ワキガの判定は数値化することが難しく、ワキガの診断は医師個別の方法・判断基準に基づくことが一般的です。例えば、腋にティッシュやガーゼを挟んでもらい、一定時間経過後に臭いをかいで判定するなどです。また、家族にワキガの人がいるかどうか、下着が黄ばむことがあるかどうか、耳垢は湿っているか乾いているかなどを参考に総合的に判断することもあります。
自分ではワキガだと思っていても、医師にワキガだと診断されなければ保険適応とはなりません。
どうしても数値では表せないので、医師によって判断が違わざるを得ないのです
3.保険適応でできるワキガ治療は1つだけ
健康保険で出来る治療は「反転選剪除法(皮弁法)」という手術方法だけです。(平成29年8月現在)ワキガではなく多汗症に対してですが「ボトックス注射」という注射で汗の量を抑える治療方法がありますが、これはワキガではなく、多汗症の方に施される治療方法です。
反転剪除法(皮弁法)手術
ワキガの手術に対する唯一の保険適応治療です。保険適応だから古い手術で効果が薄いとか、自費の最新治療の方がいいということはありません。しっかりとした効果が確認されるから保険で扱っていると思って下さい。(もっとも、個人の体質、身的素因により効果は異なる場合があります)。
この手術は腋に3㎝程の傷を作って、腋の皮膚のすぐ下にあるアポクリン腺を目で確認しながらハサミで切り取っていきます。目で確認しながら切り取るので確実な効果が望めます。
*手術後に残る傷は医師の切開法法によって異なることがあるので、気になる方は事前に担当医に聞いてください。
手術後は安静が必要
皮膚の下にあるアポクリン腺を取っていきますので、手術が終わった時には腋の皮膚がペラペラの状態になります。身体は元気ですが、腋の皮膚は大きなダメージを受けており安静が必要です。
手術後は腋にガーゼなどを挟んで圧迫し、傷口の安静を保つようにします。少なくても3日程は腕をあまり動かさないように指示があるはずです。
傷跡が目立ちにくくなるのに時間がかかる
ワキガの手術後は傷口が出来ています。傷口の抜糸は1週間ほどで行うのが一般的であり、その後傷が治っていきますが、傷跡が目立ちにくくなるには時間がかかります。早い人でも3ヶ月、通常は1年ほどかけて傷跡が目立ちにくくなっていきます。
皮膚が茶色くなることがある
手術後は腋の皮膚がダメージを受けて茶色くなることがあります。色素沈着といいます。
徐々に薄くなっていきますが、茶色い色が残ることもあります。
腋毛がなくなる
アポクリン腺を切除すると腋毛が生えてこなくなります。女性では気にならないかも知れませんが、男性ですと気になる方もいるでしょうから、事前に知っておいてください。
左右片側ずつ手術する考え方もある
手術後には安静が必要になり、左右両側を一緒に手術すると生活が結構不便になってしまいます。そこで片側ずつやるという選択肢もあります。
“多汗症に対するボトックス注射”
ボトックス注射はワキガの治療方法ではなく、腋の多汗症の治療方法で保険適応になりました。ここでも紹介します。
腋にボトックスという注射をして汗を止める方法です 。ボトックスを注射すると、脳から出る汗を出すための指令をブロックして、注射した部位の汗をストップさせます。
腋の汗が多くて悩んでいる方に健康保険で可能な治療法です。ただし、保険が効くかどうかは一定の診断基準があります。
ワキ汗に関しては「脇汗を抑えるボトックス注射の効果と持続期間・保険適応とは」をお読みください。ボトックスの保険治療に関しても解説しています。
4.保険で治療を受けるために知っておくべきこと
ここ10年ほどでワキガの手術を保険で行う病院やクリニックが増えてきたそうです。この章では健康保険で手術を受ける場合に知っておくべきことを解説します。
4-1.保険で治療を受ける際のメリットとデメリット
保険で手術を受ける場合は反転剪除法(はんてんせんじょほう)と言う手術しか適応になりません。(平成29年8月現在)医師によって傷の切開方法が違いますが、通常腋に3㎝程度の傷が出来ます。
保険治療の1番のメリットは安価で手術を受けられるということでしょう。保険の場合は左右両側でおおよそ4-5万円位です (入院で行うと費用はもっとかかります)。自費で同じ手術を受ける場合はおおよそ20~30万円程度です。(費用はクリニックによって異なります)
美容クリニック(自費)では、この他に小さい傷から行う方法の手術や、腋汗を減らす治療で皮膚を切らずに行える「ミラドライ」という方法などがあります。しかし、一般的にワキガの臭いを完全に除去しようとすると反転剪除法が基本になります。
健康保険利用のメリット:自費と比べて安く手術を受けられる。
健康保険利用のデメリット:治療方法が決まっているため自分で選ぶことが出来ない。
4-2.診察を受ける際の注意点
診察は、臭いがあるかどうか、臭いがワキガの症状に基づくものかを確かめる目的で行われます。診察前に、シャワーを浴びてキレイにして、デオドラント剤を付けて…では診察の妨げになります。
臭いをチェックされるなんて恥ずかしいから、と思われる方もいるでしょうが、普通に生活している状態で診察を受けるようにしましょう。また、来院前に病院から指示のある場合はその指示に従って下さい。
4-3.保険適応外の治療法も知っておく
保険適応にならない治療方法もあります。ほとんどが、健康保険で行う反転剪除法より傷が小さくて済む、回復が早い、などを売りにしています。しかし、実際に効果の高いのは保険でも行うことの出来る反転剪除法です。(個人差はあります)
手術後の傷が大きいのは嫌だ、完璧でなくても臭いが減ればいい、ダウンタイム(手術後の回復期間)を短くしたい、とお考えの方は保険外治療を考慮してもいいと思います。
5.保険適応(反転剪除法)の手術のリスク
反転剪除法(はんてんせんじょほう)の手術にはリスクもあります。
傷の治りが良くない場合がある
反転剪除法の傷や皮膚は血液の巡りが悪く、手術後に安静を必要とすると言いました。それ故、傷の治りが良くないことがあります。傷の治りが良くないといっても程度がいろいろあり、治療が必要な場合は通院しての処置が必要になる場合もあります。細かい処置も含めておおよそ20-30人に1人の位のイメージです。
手術後の傷が硬くなることがある
肥厚性瘢痕(ひこうせいはんこん)といって、傷が硬くなることがあります。時間経過とともに改善していくのが一般的です。
傷の瘢痕(はんこん)が極端な場合は傷を柔らかくする注射(ステロイド)を行う場合もあります。
皮膚の下に血が溜まることがある
皮膚を剥がしたところに血が溜まることがあります。この場合は早急に血を抜く処置をする必要があります。
ワキガの症状が再発することがある
再発率は7.7%という報告があります。
6.保険適応外のワキガ治療の種類と比較
ワキガの治療にはいろいろな方法があり、保険が適応されないけれども一定の効果があるものもあります。
効果に関しては唯一、保険適応となっている「反転剪除法(皮弁法)」が般的には最も期待できますが、傷を小さく抑えたい、一定の効果があれば完璧に臭いがなくならなくてもいい、ダウンタイムを短く抑えたいという場合は美容クリニックで自費のワキガに対する手術を受ける事も選択肢の一つです。
ワキガの手術に関しては「ワキガの臭いを解消する手術の効果・リスク・再発率の全て」をお読みいただければそれぞれの治療の比較が詳しくお分かりいただけます。
術後の固定 | 効果 | 合併症の頻度
(小さいものも含む) |
再発率 | 費用 | 保険適応の有無 | |
反転剪除法(皮弁法) | 大(1週間) | 大(100%に近い満足) | 約18% | 7.7% | 20-30万円 | ○:保険の場合は4-5万円の負担 |
吸引法 | 中(2-3日) | 中(70-80%が満足) | 約7% | 16.2-46.9(報告による) | 10-20万円 | × |
超音波メス | 中(4-5日) | 中(80%以上が満足) | 10%台 | 13.6% | 20-30万円 | × |
脂肪溶解レーザー | 小(1日) | 小 | 非常に少ないが火傷を起こすと重大 | ? | 約10万円 | × |
稲葉法 | 中(1週間) | 中~大 | ? | ? | 20-30万円 | × |
*報告者の調査方法や各クリニックの診療費用基準により、上記に記載した数字は報告によって異なります。あくまで、おおよその数字としてご認識ください。
*保険診療で片側の場合はより費用の負担が減ります
また、ワキガへの直接的な効果ではありませんが、汗を抑えることでも臭いが軽減します。ワキガであっても、手術ではなくボトックス注射で汗を抑えて臭いを軽減する、自費であればそういったことも可能です。
ワキ汗を抑える方法や、ワキ汗を抑える事によってワキガの臭いを軽減したい方は「最適な方法を見つけよう!病院で行う多汗症治療のまとめ」も参考にして下さい。
7.反転剪除法の手術を受けるかどうかの判断基準
ワキガの手術には健康保険が効きます。しかし、必ず治療が必要な病気という訳でもないと思います。まずは、主観的に腋の臭いを治療したいかどうかが重要です。
その上で、医師の診察上ワキガと診断されれば、保険を適用のうえ、手術を受けることが出来ます。
また、ワキガではないと診断された場合はどうしたらいいのでしょう?
ワキガだと思っている方の中には、実は気にし過ぎでワキガの臭いがほとんどしない人もいます。まず、そのような人に手術をしても症状は改善しません!結局リスクのみあって、メリットはないのです。ですので、医師からワキガではないと言われた人は保険適応となる反転剪除法の手術を、例え自費でも、受けるべきではないと個人的には考えます。
もしワキガではないと診断されても、症状が気になっている場合は、ワキガに対する手術ではなく腋の汗に対する治療ですが、自費でボトックス注射を受けてみるのもいいと思います。費用は掛かりますが、注射による簡易な治療方法ですので、手軽に行えます。また、個人差はありますが、汗は確実に減るのでスッキリした感じは得られます。自分が気にしている症状から解放されるかもしれません。
8.まとめ
ワキガを保険適応で治療する場合は反転剪除法の手術を行う事になります。傷は多少大きくなりますが、確実な効果が期待できる手術です。まずは、気になる腋の臭いが本当にワキガなのかどうかを医師の診察を受けて確認してください。
なお、解説した治療方法に基づく効果等には個人差があることを予めご理解ください。