ベイザーリポと言うのは、脂肪吸引の種類の一つで、脂肪を超音波で柔らかくしてから吸引する方法です。
クリニックの広告や、脂肪吸引の情報サイト、色々と調べても「効果がすごい」「ダウンタイムが短く、回復が早い」「デコボコにならない」など、いい事しか書いてありません。
しかし、実はベイザーリポで脂肪吸引を行っても効果は変わりませんし、ダウンタイムも短くなりません。デコボコになるかどうかは医師の腕です。
これらの広告にはかなり嘘が入っています。手術を検討中の方は後悔する事の無いように、このページを必ず読んで下さい。
そうすれば、根拠のある正確な知識を得て、ベイザーリポを受けるべきかどうか判断できるはずです。
目次
1.ベイザーリポ脂肪吸引とは
ベイザーリポ脂肪吸引とは、通常の脂肪吸引を行う際に、脂肪にベイザー超音波と言う機械を当てて脂肪を柔らかく(乳化と言います)してから脂肪吸引する方法 です。「ベイザー脂肪吸引」と表示してあることもありますが、同じものです。
ベイザー脂肪吸引に関してより詳しく知りたい方は「ベイザー脂肪吸引とは?術前に必ず読んでおきたい効果の違い」をお読みください。
ベイザーリポは発売されてから機械のバージョンアップなどで、バージョン1.0や2.0、2.2などがありますが、この機械に使用するベイザー超音波は1.0でも2.0でも2.2でも全て一緒で、違うものではありません。機械全体の仕様が変化していっているだけです。
2.ベイザーリポでうたわれている3つの嘘
ベイザーリポ脂肪吸引の宣伝を見ると、良く見かける宣伝文句があります。
- ベイザーリポ脂肪吸引だと回復が早い
- ベイザーリポ脂肪吸引なら90%の脂肪が除去できる
- ベイザーリポ脂肪吸引なら、たるみが出ない、凹凸にならない
こんなことが、色々なクリニックのホームページに載っています。
しかし、実はそれを裏付ける検証は見当たらないのです。それどころか、否定するような内容の実験や論文はあります。この章ではそれぞれについて詳しく解説していきます。
実際に私も何回もベイザーリポを使用していますが、ベイザーリポだから結果が良かったという事は一切ありません。
2-1.ベイザーリポなら、回復が早いと言う嘘
ベイザーリポの広告には「脂肪を溶かしてから吸引するので、ダウンタイムや回復が早い」と書かれていますが、実は全くそんな事はありません。
ベイザーリポを作っている会社がスポンサーになっている論文( A Multicenter, Prospective, Randomized, Single-Blind,Controlled Clinical Trial Comparing VASER-Assisted Lipoplasty and Suction-Assosted Lipoplasty)が発表されているのですが、この論文にはベイザーリポであっても、普通の脂肪吸引であってもダウンタイムに違いはないとなっています。
この論文では、20人の患者に対して33部位での脂肪吸引の結果の比較を検証しています。
下の表はこの論文から作った表です。日本語にしていますが、数字はそのままです。
これによれば、患者評価の点数では痛みの程度がひどく、腫れもベイザーリポの方が大きかったような数字になっています。(統計学的に比べると両方に差はないと言う結果です)
結論:ベイザーリポでも普通の脂肪吸引でもダウンタイムは変わらない!
論文のデザインとしては非常によく出来ているのですが、論文の中で計算間違いなどを指摘されています。
Unfortunately, however, this article’s methodological deficiencies, including error in calculations, make it unratable
「不運な事にこの論文には、方法論の欠点や計算間違いがある。そのため、論文の質を評価できない」となっています。計算間違いや方法論の欠点を指摘されているのは、皮膚の引き締めに対する評価と出血量に対してです。
しかし、指摘されているのは皮膚の引き締めや出血量の検証に関してであり、ここで言うダウンタイムなどはエビデンスレベル1とされており信頼性のおける結果 です。
2-2.ベイザーリポなら、90%の脂肪が取れると言う嘘
2つ目は「ベイザーリポ脂肪吸引なら90%の脂肪が除去できる」と言う宣伝を見ることがあります。
ベイザーリポの論文を探しても90%の脂肪が除去できると言うものはありません し、手術前と手術後で脂肪量の変化を評価したものもありません。(もし、存在するのであれば教えてください)
ベイザーリポを使えば医師が脂肪を吸引しやすくなり、楽に脂肪吸引を行う事も可能かもしれません。溶けた脂肪を吸引するか、普通の脂肪を吸引するかの違いで、結局は医師の技術で変わってきます。
また、一番重要な患者評価ですが、これも上の論文では効果に違いはない結果になっています。
結論:ベイザーリポだからと言って、皮下脂肪の90%が除去できると言う根拠はないし、効果も通常の脂肪吸引と比べて変わらない
2-3.ベイザーリポなら、たるみや凹凸が出ないと言う嘘
3つ目は「ベイザーリポ脂肪吸引なら、たるみが出ない、凹凸にならない」と言う宣伝です。
実際の論文では引き締まり具合(たるみの出にくさ)について、ベイザーリポであれば100の面積がが83に引き締まり、通常の脂肪吸引であれば100の面積が88.9に引き締まると言う結果になっています。
しかし、たるみに関しては方法論の間違い(引き締まりの計測方法の間違い)や計算ミスを指摘されているので信憑性は低いと評価されています。
もしたるみが出にくいと言う論文の内容をそのまま信じたとしても見た目にはほとんど分りませんし、実際の患者満足度に違いがあるものではありません。
その違いをイメージできる図を作ってみました。たとえ、論文の内容を完全に正確なものとしても83と88.9と言う数字は視覚的にはあまり変わらない事にお気づきでしょう。
結論:ベイザーリポで脂肪吸引を行えばたるみが出ない訳ではない。年齢や肌の質感など様々な要素が関係する
3.ベイザーリポ脂肪吸引と通常の脂肪吸引の料金の比較
ベイザーリポ脂肪吸引と通常の脂肪吸引をを12個のクリニックから値段を算出しました。
料金に大きな違いがあります。おおよそ1.6倍ほどの開きがあります 。
効果や経過に変わりがないのにこれほど違うのは、機械の値段や広告宣伝費の違いです。2012年の論文にはベイザーリポの機械が$90,000-$125,000(約1000万円)とありますので、それだけのコストが上乗せされているのがお分かりいただけるでしょう。
4.まとめ
ベイザーリポが流行っている理由は、何と言っても広告が上手く行っているという事です。これは認めざるを得ません。しかし、中には明らかな誇大広告が含まれていると考えます。
方法論や計算間違いがあるにもかかわらず、それには目をつぶり論文に書いてある「引き締め効果が強い」「出血量が少ない(ほとんど変わりません)」という事に付け加え、「ダウンタイムが短い」「回復が早い」などの嘘を交えて大々的に宣伝しています。
実際はベイザーリポであっても、通常の脂肪吸引であってもダウンタイムや効果に違いはありません。結局は医師の技術です。
効果が同じでも、料金が高いので積極的にベイザーリポを受ける必要はありません。
もしあなたが、脂肪吸引を受けようとしているのであれば、ベイザーリポを行っているからと言う理由で、クリニックや医師を決めるのは間違いです 。あなたが、良いと思うクリニックや医師がベイザーリポで脂肪吸引を行っているのであれば受けるのはいいと思います。
医師の経験や症例写真、人柄で決めましょう。
なかでも、「ベイザーリポじゃないと脂肪があまり取れない」などと勧めて来る医師はあまり信用しない方が良いです。
脂肪吸引について詳しく知りたい方は「最高の脂肪吸引を受けるために必ず知っておきたい全知識」を参考にして頂けると、脂肪吸引の方法や、部位別の解説など詳しく知る事が出来ます。
文献1、Nagy MW, Vanek PF Jr : A Multicenter, Prospective, Randomized, Single-Blind,Controlled Clinical Trial Comparing VASER-Assisted Lipoplasty and Suction-Assosted Lipoplasty.Plast Reconstr Surg.2012;129:681e-689e
文献2、Matarasso A : Discussion: A multicenter, Prospective, Randomized, Single-Blind,Controlled Clinical Trial Comparing VASER-Assisted Lipoplasty and Suction-Assosted Lipoplasty.Plast Reconstr Surg.2012;129:690e-691e
文献3、Dr Eric Swanson : Improved Skin Contraction after VASER-Assisted Lipoplasty:Is it a Change We Can Believe In?Plast Reconstr Surg.2012;130:754e-756e
文献4、Eric Swanson:Levels of Evidence in Cosmetic Surgery: Analysis and Recommendations Using a New CLEAR Classification. Plast Reconstr Surg Glob Open. 2013 Dec 6;1(8):e66