シリンジ脂肪吸引と言うのは、脂肪吸引の種類の一つで、シリンジ(注射器)で陰圧を作り脂肪を吸引する方法です。ノーマルな脂肪吸引は掃除機のような機械で陰圧を作り出します。
クリニックの広告や、脂肪吸引の情報サイトを調べると、「繊細な作業が出来る」「腫れが少ない」など書いてありますが、情報が少なくシリンジ脂肪吸引とはどういう方法だろうと思っている方も多いと思います。
実はシリンジ脂肪吸引だからと言って、繊細な作業が出来るとか、腫れが少ないという事はありませんし、ダウンタイムも変わりません。なぜなら、陰圧を作り出す仕組みがシリンジ(注射器)なのか機械なのかの違いだからです。
これらの広告にはかなり嘘が入っています。手術を検討中の方は後悔する事の無いように、このページを必ず読んで下さい。そうすれば、根拠のある正確な知識を得て、シリンジ脂肪吸引を受けるべきかどうか判断できるはずです。
目次
1.シリンジ脂肪吸引とは
シリンジ脂肪吸引とは、脂肪を吸引する際の陰圧をシリンジ(注射器)で行う方法です。
そもそも脂肪吸引とは、身体に小さな傷を付けて、その穴からカニューレと言われる管を入れ、脂肪を吸い出す方法です。脂肪を吸い出す際に陰圧(吸引する力)がないと脂肪を吸引できない訳ですが、この陰圧(吸引する力)を機械で作り出すか、シリンジ(注射器)で作り出すかの違いです。
シリンジで陰圧を作ると言うのは、注射器の押し手を引く事によって、注射器内部の圧力を低めて陰圧にする方法です。健康診断の採血で、注射器を引くと血が引けてきますが、あれは注射器内部の圧力が下がって(陰圧なって)針先から血液が入って来るのです。
機械と言うのは、真空ポンプと言われるものを使いスイッチ一つで陰圧を作り出します。これは掃除機と同じようなものですね。
結論ですが、脂肪を吸引する際の陰圧を作る仕組みが違うだけで、通常の脂肪吸引としてはあまり変わりありません。
また、費用に関しても通常の脂肪吸引とあまり差はありません。下の表は通常に脂肪吸引の値段を12個のクリニックから、シリンジ脂肪吸引を4つのクリニックから算出した平均で、大まかな相場感を表しています。脂肪吸引には麻酔代や圧迫物品代などこの他にも必要な費用がかかる場合が多く、実際にはプラス1~10万円位かかります。(今回調べた限りではお腹だけ価格に差がありました。)
2.シリンジ脂肪吸引をあえて選択する必要はない
1章ではシリンジ脂肪吸引と通常の脂肪吸引の違いを説明しました。2章では、シリンジ脂肪吸引をわざわざ選択する必要がない事を説明します。
理由①:通常の脂肪吸引と比較して結果もダウンタイムも変わらない
シリンジ脂肪吸引は繊細で仕上がりの良い脂肪吸引が出来るとありますが、そんなことはありません。上に書いたように吸引圧が一定しないので繊細な作業とは言えません。機械式であればダイヤルを回せば強い吸引圧も弱い吸引圧も設定できますし、おおよそ吸引圧が一定します。
また、シリンジ脂肪吸引では腫れが少ないとかダウンタイムが少ないと書いてあることもありますが、あまり関係ありません。腫れやダウンタイムは吸引する脂肪の量に大きく依存します。また、個人差も大きいです。
シリンジ脂肪吸引の場合、吸引圧が落ちてくるので、吸引量が少なく終わってしまった場合は腫れも少なくなります。(もちろん、シリンジ脂肪吸引でも労力をかければ適量の脂肪が吸引できます)
特に、腫れが少ないと言う宣伝で顔の脂肪吸引に向いているなどと宣伝されますが、通常の脂肪吸引でも腫れはあまり変わりません。下の写真は通常の脂肪吸引で行った経過ですが、腫れも大きくない事が分ります。
そもそも、通常の脂肪吸引(機械式)だろうが、シリンジ脂肪吸引だろうが、吸引圧(陰圧)を作る原理が違うだけで、同じ脂肪吸引の方法です。それゆえ、どちらで行ってもあまり変わりがありません。
理由②:傷口の近くが吸引しにくい
シリンジによる吸引は脂肪の中で行わなければうまく陰圧がかかりません。傷口の近くは空気が入りやすく、シリンジでは非常に吸引しにくくなります。そのため、傷口の数を増やして対応することもあります。
理由③:吸引圧(陰圧)が一定しない
シリンジ(注射器)の内部に脂肪が入って来るとだんだんと吸引圧が落ちてきます。吸引圧が落ちてくると脂肪が吸引しにくくなり、効率が悪くなります。ただし、吸引圧が徐々に弱くなるので、脂肪吸引を始められて間もない先生には安全で向いている方法でしょう。吸い過ぎると言うリスクが少ないです。
理由④:手術する人の労力が大きい
脂肪吸引を受ける方には関係ありませんが、手術する医師の労力が多くなります。シリンジ(注射器)は大きくても50㏄程度です。太ももなどは1000㏄以上の脂肪を吸引するので、シリンジはすぐに一杯になり、脂肪を吸っては捨てて吸っては捨ててと、合間の作業が大変です。
理由⑤:手術時間が長くなる
シリンジ脂肪吸引では一度に吸引できる量に限界があります。理由③で説明したように労力が大きくなると共に手術の時間もかかります。そうする事で、使用する麻酔の量が増えたり、身体への負担も増えたりします。使用する麻酔の量が少ないほど、身体への負担が軽いほど、手術後は楽です。
3.シリンジ脂肪吸引を選択するべき時とは
解説したようにシリンジ脂肪吸引と通常の脂肪吸引ではあまり差はありません。どちらを選んでも結局は医師の腕によります。
では、シリンジ脂肪吸引を選択すべき時とはどういう時なのかを解説します。
3-1.脂肪吸引をやってもらいたい医師がシリンジ脂肪吸引を行っている場合
脂肪吸引は現在のところ、どの方法でも効果やダウンタイムに差がありません。結局は医師の腕と医師との相性(意思疎通)で決まります。もし、自分が手術を希望する医師がシリンジ法で行っているのであれば、あえて他の方法にこだわらずシリンジ脂肪吸引で行うべきでしょう。
3-2.シリンジ脂肪吸引で費用を抑えられる場合
私が調べた限りでは1章でご紹介したとおり通常の脂肪吸引と比較してもあまり費用相場は変わりません。
しかし、シリンジ脂肪吸引はクリニック側の初期投資が非常に低く抑えられてコストのかからない方法ですので、通常の脂肪吸引と比較して安く設定することができる手術です。シリンジ脂肪吸引を選ぶメリットはあまりありませんが、大きなデメリットのある方法でもないため、費用を抑えたい場合は検討する価値があります。逆にシリンジ脂肪吸引であるにも関わらず、費用が高い場合はおすすめできません。
4.まとめ
実際にはシリンジ脂肪吸引も通常の脂肪吸引もあまり変わらないという事をご理解いただけたと思います。シリンジ脂肪吸引の方が機械式の通常の脂肪吸引よりも手作業の分、少しハンデがあると言うイメージです。
脂肪吸引には色々名前の付いたものもありますが、効果やダウンタイムは変わりません。広告でよく見るベイザー脂肪吸引と言うものもそうです。ベイザー脂肪吸引について詳しく知りたい方は「ベイザー脂肪吸引とは?術前に必ず読んでおきたい効果の違い」をお読みください。
脂肪吸引を受けようとしている方は、脂肪吸引の方法ではなく、症例写真やドクターとの相性で決めるようにしましょう。