脂肪吸引について調べていると、手術後にリバウンドしてしまったという体験談を聞いたり、他の部位に脂肪が付きやすくなるという内容をブログなどで見たことがあったりすると思います。
しかしその一方で、クリニックのホームページやネットの情報では、「脂肪吸引はリバウンドしない」というような宣伝をよく目にする方も多いでしょう。
そのため、実際にはリバウンドするのか、しないのか?太りやすくなるのか?など、本当のところはどうなのかが知りたいという方は多いですよね。
どのような状態をリバウンドと捉えるかによっても変わってきますので、この記事では出来るだけ詳しく脂肪吸引のリバウンドについて解説していきます。さらに、どうすればリバウンドせずに済むのか、脂肪吸引の効果を持続するための方法をお教えいたします。
せっかく高い料金を払って脂肪吸引で細くなるのだから、リバウンドで後悔するなんて、絶対にしたくないですよね。
リバウンドを予防するための注意点を知っておけば、満足のいく脂肪吸引の効果を得ることにも繋がりますので、必ずお読みください。
目次
リバウンドとは何か?
まず、リバウンドするかしないかを知りたいと思いますが、リバウンドとはどうなることなのかを定義しないと解説が難しくなってしまいます。
この記事では以下の3ポイントに分けて解説していきます。
- 脂肪吸引した部分が再び太くなってしまうのかどうか?
- 脂肪吸引した部分以外のところが太くなってしまうのか?脂肪が付きやすくなるのか?
- リバウンドするのであれば防ぐ方法はあるのか?
脂肪吸引した部分が再び太くなってしまうのかどうか?
気になる部分の脂肪吸引を行っても元に戻ってしまっては、脂肪吸引する意味がありません。実は、脂肪吸引後のリバウンドについては色々な意見がありますが、脂肪吸引を行った部分がまた太くなるというのはほとんど指摘されていません。 (何年間にもわたる長期的な変化の評価は困難です)
リバウンドがあったとする研究でも、脂肪吸引したところの脂肪のボリュームが再び増えたということは観察されませんでした。
ただし、長い目で見れば体重変化とともに、脂肪吸引した部分も太くなることはあり得ますので、体重そのものを増やさないように気を付けるべきです。
脂肪吸引した部分以外のところが太くなってしまうのか?
まず体重変化についてです。一般的に、女性の体重は生理周期などで1-2kg程度は自然に増減しますので、なかなか正確に計測するのは難しいのですが、1リットル以上の脂肪吸引を行ったら体重はいくらか減ると思って頂いた方が良いでしょう。体重が減らないということは脂肪吸引した部分以外のところが太くなって、多少リバウンドしている可能性が高いです。
脂肪吸引手術後の体重について以下のような研究があります。
①平均1.2リットルの脂肪吸引で2か月後に1.2kg体重が減ったというデータです。しかし、6か月後に計測すると体重減少は0.6kgと戻りが見られた。この研究では食事内容は手術前後で変化ないように指導を行っています。
と言うデータがある様に、一般的に脂肪吸引の手術後はある程度体重が減ります。ですので、体重が全く元に戻るということは、脂肪吸引した部分以外のところが太くなって、リバウンドしてる可能性が高いということですし、上記データのように一番体重が減っている状態を維持できるのが理想です。
脂肪吸引の後はリバウンドして見た目・体重が戻りやすい?戻りにくい?
議論のあるところなのですが、脂肪吸引を行うと、
①脂肪吸引したところ以外に脂肪が付きやすくなり、脂肪の再分配が行われる
②脂肪が一気になくなることによってエネルギーの支出が減って太りやすくなる、と言う二つの仮説が立てられています。
逆に、そんな事はないという、データもあります。完璧な論文・研究というのはありません。年齢・食事や運動習慣、いつまで経過観察するかなど、難しい点がいくつもあるからです。
しかし、みなさんは脂肪吸引後はリバウンドして脂肪が付きやすくなる、体重が戻りやすくなっていると心構えして対応した方が良さそうです。そうしたほうが、脂肪吸引の効果を、より享受できるからです。
“どこに脂肪が付きやすくなるのか?”
これにも色々な意見がありますが、内臓脂肪につく可能性が高いのではないかと考えられています。内臓脂肪は腹囲の測定だけではなかなか分かりにくいのですが、CTなどを撮って計測したデータもあります。
リバウンドするのであれば防ぐ方法はあるのか?
リバウンドしやすい状態にあると解説しましたが、安心してください。効果に個人差はありますが、対処方法があります。
脂肪吸引後に4か月間だけ、意識的にトレーニングや食事制限を行うことです。
脂肪吸引後にトレーニングを行った人たちと、行わなかった人たちを比べた研究があります。(平均1240mlの脂肪吸引をお腹から行っています。)
それによると、トレーニングを行った人たちは、内臓脂肪が少しだけ減っており、体重はあまり変わらないのですが脂肪量が1.6kg減って脂肪以外(筋肉など)が1.2kg増えたというデータがあります。
トレーニングを行わなかった人たちは、内臓脂肪が増えて、手術後2か月目と6か月目を比べると体重の戻りも観察されています。
トレーニングは4か月継続したそうですが、6か月目でもいい状態を保っていたようです。30分程度の筋トレと30分程度の有酸素運動を週3回行っています。両方のグループ共に食事は手術前と変えないように指導されています。
脂肪の重さの比較 | 手術前 | 2か月目 | 6か月目 |
トレーニングした人の脂肪量(kg) | 17.9 | 16.7(-1.2) | 16.3(-1.6) |
トレーニングしなかった人の脂肪量(kg) | 17.6 | 16.1(-1.5) | 16.6 (-1.0) |
除脂肪量(脂肪以外の重さ)の比較 | 手術前 | 2か月目 | 6か月目 |
トレーニングした人の脂肪以外の量(kg) | 43.9 | 44.2(+0.3) | 45.1(+1.2) |
トレーニングしなかった人の脂肪以外の量(kg) | 42.3 | 42.4(+0.1) | 42.2(-0.1) |
これによると、4か月はトレーニングや食事制限を行った方が良さそうですが、脂肪以外(筋肉など)が1.2kgも増え内臓脂肪が減っているので、脂肪吸引後のリバウンド予防としてはやりすぎ?感があると個人的には思います。
人によって、脂肪吸引後のリバウンドの度合いや、トレーニングへの反応など違いますので、1リットルの脂肪吸引をしたら1kg、2リットルの脂肪吸引をしたら2kg減るんもんだくらいの感覚で食事制限や筋トレ、有酸素運動を行ってみましょう。
極力リバウンドを防ぐ具体的な方法
毎日ご飯を半分にする、間食を減らすだけでも100Kcal位の制限にはなります。出来れば筋肉トレーニングと合わせるとなお良いでしょう。自宅でできる腕立て伏せや腹筋でも結構です、週に2-3回。これをとりあえず4か月頑張ってみてください。
“食事制限”
- 夜の白ご飯の量をいつもの半分にする
- 間食をしている人は控える上記のどちらかを行ってください。
合せて、下のトレーニングを行って頂くとベターです。
“トレーニング”
- 週に2回 腕立て伏せと腹筋を10回3セット行う
- 週に2回 15-20分程度のジョギングを行う片方、出来れば両方を行ってください。
上記研究のトレーニングをランニングは6METsで30分、筋トレも6METsで30分と考えると、消費カロリーは大体300Kcalになります。1週間に3回トレーニングを行っていたので、1週間で900Kcal、一日平均130Kcal位です。(METsとは運動の強度を表す指標です)
筋トレと食事制限を同じには考えられませんが、食事制限と組み合わせて頑張ってみてください。
まとめ
脂肪吸引後のリバウンドには色々な研究があり、経過を見ている期間も異なります。短い期間の研究は信頼性が薄くなりますが、期間が長すぎても脂肪吸引以外の要因が入って来て正確なデータが取れなくなり、絶対にこうだという結論はいまだに出ていないところです。
仮に、リバウンドが起こるといっても、食生活が変化しない限り、それほど大きなものではありませんし、脂肪吸引を行ったことが原因で、脂肪吸引前よりも体重増えるとこは、一般的にありません。むしろ気にしている部分の脂肪が取れる事によって、得られる体型の変化の方が嬉しいことが多いのです。それ故、脂肪吸引後の満足度は約80%にもなり、多く行われている手術なのです。
リバウンドはしない方がもちろんいい状態を維持しておけます。食事や運動の事、上記に書いた事を気に留めておくだけでも知らないより効果的だと思います。
参考文献
No Increase in Female Breast Size or Fat Redistribution to the Upper Body After Liposuction: A Prospective Controlled Photometric Study. Swanson E. Aesthet Surg J. 2014 Aug;34(6):896-906.
Photographic measurements in 301 cases of liposuction and abdominoplasty reveal fat reduction without redistribution. Swanson E. Plast Reconstr Surg. 2012 Aug;130(2):311e-322e.
Liposuction induces a compensatory increase of visceral fat which is effectively counteracted by physical activity: a randomized trial. Benatti F, Solis M, Artioli G, et al. J Clin Endocrinol Metab. 2012 Jul;97(7):2388-95.
Fat redistribution following suction lipectomy: defense of body fat and patterns of restoration.Hernandez TL, Kittelson JM, Law CK, et al. Obesity (Silver Spring). 2011 Jul;19(7):1388-95
なお、解説における効果等には、個人差があることを予めご理解ください。