現在、日本の医療脱毛ではメディオスターやソプラノと言う新しい機械が流行っています。脱毛を考えている方であれば一度は耳にしたことがあるかもしれません。
メディオスターというのは脱毛機の商品の名前で、痛くなく医療脱毛が出来るという事で流行っています。
痛くないと言っても完全に何も感じないわけではありませんし、痛みがどれ位なのか心配になったり、痛みが小さくても効果が少ないとせっかく医療脱毛を行っても満足いかないかも知れません。
この記事では、現在わかっていることを効果や痛み、施術の方法などを出来る限りわかりやすく正しく説明していきます。
この記事を読めば、メディオスターを受けようかどうか迷っている人も、受けるべきかどうかの判断が付きやすくなるはずです。
是非、この記事を読んで参考にしてください。
*メディオスターとは日本では蓄熱式脱毛機などと呼ばれるジャンルに分類される機械です。蓄熱式脱毛機の先駆けにはソプラノと言う機械がありますが日本ではメディオスターの方が流行っています。この記事では、ほぼ同一のものとして考え、参考にしている論文もメディオスターのものとソプラノのものが混じっています。
目次
1.メディオスターとは?
メディオスターとは脱毛を行うための機械の名前です。今までの医療脱毛レーザーは少なからず痛みを伴っていましたが、メディオスターは痛みが少ない新製品という事であっという間に日本で流行ってきました。
まず、メディオスターとはどのようなもので、どうやって行うのかを解説します。
1−1.メディオスターの原理
医療レーザー脱毛には基本的に以下の3種類のレーザーが存在します。
- アレキサンドライトレーザー(755nm)
- ダイオードレーザー(810nm)
- ヤグレーザー(1064nm)
実はメディオスターも従来のレーザー脱毛と同じ種類のレーザー(ダイオードレーザー)を使用しています。
何が違うのかと言えば、従来の脱毛レーザーはパワーを大きくして1か所ずつに当てていきます。対して、メディオスターのような蓄熱式脱毛機はパワーを小さくして何発も繰り返し当てていく事により徐々に温度を上げていき脱毛します。
ですので、1か所ずつレーザーを当てると言うよりもグルグル動かしながらやスライドさせながらレーザーを連射して施術していきます。その結果、熱感は出てきますが、1発1発の痛みは少ないという事になります。
1−2.メディオスターで行う手順
両方ともに目的とする部位にレーザーを当てていくのですが、1発1発当てていくものと異なり、スライドして動かしながら当てていきます。滑りを良くしたりするためなどの目的でジェルを使用して行っていきます。
文章での説明よりも下の動画を見て頂いた方が早いと思います。見て頂くと分りますが、ジェルを使用して施術を行います。ジェルを塗る時間や拭き取る時間、手間、拭き取った後のベタつき(ほんの少しですが)がジェルのデメリットです。
時間は従来のものと比較してあまり変わらないと考えていいと思います。背中やお腹など広範囲で一気に出来る部位はメディオスターやソプラノのような蓄熱式の方が短時間で終わる可能性が高いですし、小範囲でずつしかできないところは従来のレーザーが早いと考えられます。(何回スライドさせて行うかにもよって変わってきます)
2.メディオスターを選ぶべき?
では、メディオスターを選ぶべきでしょうか?私は現在のところ積極的にはお勧めしません。なぜなら、効果がはっきりしない事や施術中は良くても時間が経ってから毛が生えてこないかどうか?など十分に証拠があるとは思えないからです。
実際、痛みの強い部位は「口周り」「脇」「VIO」「下腿の前面」くらいです。それであれば少し手間ですが、麻酔クリームを塗って行えば従来の医療脱毛レーザでも半分くらいの痛みで出来るからです。
とは言っても、メディオスターに医療脱毛レーザーとしての根拠がないわけでは決してありません。痛みが少ない方がいいと言う方はメディオスターを選ぶのがいいと思います。
また、部位によっては、「脇」「下腿」などの脱毛しやすい部位、の場合はメディオスターでもいいと思いますし、「痛みの強いVIOを薄くしたい」「痛みの強い男性の髭を薄くしたい」と言うニーズにはマッチすると思います。
3.メディオスターと従来の効果の比較
実際の脱毛の効果を口で説明するのは難しいですので、この章では従来の医療脱毛機と比べてどれ位の効果があるのかを見ていきたいと思います。チェックするポイントは既定の脱毛回数が終わった時にどれくらい毛が減っているのか、最終の時から数か月後で新しい毛が生えてきていないかどうかがチェックポイントです。
部位 | メディオスターorソプラノ | 従来の医療脱毛レーザー | 回数 | 人数 | 著者 |
数か月後の減少率 | 数か月後の減少率 | ||||
上唇 | 49%
(6か月後) |
48%
(6か月後) |
3回 | 29 | Fiskerstrand |
脇・下腿 | 47.5%
(12か月後) |
44.7%
(12か月後) |
5回 | 9 | Koo |
脇 | 90.2%
(6か月後) |
87%
(6か月後) |
4回 | 92 | Li |
脇 | 35.7%(6か月後) | 54.2%(6か月後) | 5回 | 49 | Wanitphakdeedecha |
下腿 | 86%
(6か月後) |
91%
(6か月後) |
5回 | 25 | Braun |
様々 | 70.1%
(3か月後) |
75.5%
(3か月後) |
4回 | 50(28:22) | Royo |
いくつかの研究結果を上の表にまとめましたが、従来の脱毛レーザーと比べてあまり効果に差がないのが分ります。ちなみにほとんどがダイオードレーザーとの比較です。注意すべき点は検証されている数(人数)がそれほど多くなく高い信頼性と言う訳ではない事、また実施している部位が脇や下腿などの比較的脱毛が簡単な部位で研究がおこなわれている事です。
ですので、従来の脱毛レーザーと比べて同じような効果が得られると思うが、十分な証拠はなく、半年1年での戻りは従来の脱毛レーザーよりも大きくなる可能性もありますし、脱毛を行う部位によっては効果が大きく違うという事も考えられます。
4.メディオスターと従来の医療脱毛の痛みの比較
痛みについては感じ方が人それぞれですので、一概には言えませんが、これも研究結果がありますので下にまとめました。これはいずれも10段階評価での点数です。
部位 | メディオスターorソプラノ | 従来の医療脱毛レーザー | IPL(光脱毛) | 著者 |
顔 | 3 | 6 | Haak | |
顔 | 2 | 6 | Pai | |
脇・下腿 | 2.7 | 3.6 | Koo | |
脇 | 2.75 | 6.75 | Li | |
下腿 | 3 | 5 | Braun | |
様々 | 5.8* | 6.2 * | Royo |
*5段階評価のものを10段階評価に計算し直しました
この表から分るように、痛みに関してはメディオスター・ソプラノのような蓄熱式脱毛機の方が少ないのが分ります。
“私の個人的な感想”
私もいくつかの脱毛機を試してみましたが、メディオスター(蓄熱式脱毛)の痛み1、ライトシェアデュエット(ダイオードレーザー)1-2、ジェントルMAXpro(アレキサンドライトレーザー)3、ジェントルMAXpro(ヤグレーザー)4位の痛みに感じました。
特にメディオスター(蓄熱式脱毛)は痛くないのですが、急に熱い感じがしてきます。熱い感じが苦手と言う人には向いてないかも知れません。
5.メディオスターのリスクは?
5-1.まれにヤケドが起こる事がある
脱毛のリスクはヤケドです。メディオスターやソプラノのような蓄熱式脱毛だと火傷のリスクがないと書いてあることもありますが、実際にやけども報告されています(*)。
施術が終わった後に一部だけヒリヒリ痛いとか、皮膚の色が周りと違うような場所があれば施術を受けたクリニックに相談して下さい。
5-2.効果が不安定なことがある
また、メディオスターなどの蓄熱式脱毛機は機械を動かす速さやどこの時点で終了とするかなどによって結果に差が出る事が考えられます。すなわち、やる人(施術者)によって効果に差が出てしまう事があり得ます。
6.選ぶべき医療脱毛の種類
現段階では、蓄熱式脱毛ではなく、従来の医療脱毛レーザーであるアレキサンドライトレーザー等を選ぶのが良いでしょう。
※医療脱毛についてはアレキサンドライトレーザー以外に複数の種類があります。より詳しくしりたい方は「脱毛の種類を徹底比較!医師が教える後悔しない脱毛法とは」とご覧ください。
なぜなら、現時点で根拠の高いスタンダードな脱毛であり、痛みについても、痛みが大きい部位は口周りや脇、下腿、VIOなどの小範囲で、毛の少ない所はそれ程痛くないと思われるためです。
従来のアレキサンドライトレーザーやダイオードレーザーで麻酔クリームを塗って処置すれば痛みは蓄熱式脱毛機と変わらないほどになると思います。痛みが我慢できないような部位は麻酔クリームを縫って行えばいいと思います。
ヤグレーザーもいいのですが、痛みが大きい事が欠点です。アレキサンドライトレーザーで脱毛できなかった部位に補助として使用するのがいいと思います。
医療脱毛レーザーでもたまに毛は生えてきてしまいます。そこまで処理をしようとすると、残った毛を針脱毛で処理するのがベターです。
7.まとめ:従来の医療脱毛との比較
まとめると、メディオスターのような蓄熱式脱毛機と従来のレーザー脱毛機の違いは以下のようになります。
メディオスター | 従来の脱毛機 | |
効果 | 同等と言う報告が多いが、対象人数や部位が限定的で十分な証拠ではないと考えられる | |
痛み | 少ない | 少し痛い、ヤグレーザーは結構痛い
麻酔クリームを塗ることもできる |
費用 | 同程度の費用になっていることが多い | |
メリット | 痛みが少ない、肌の色に関係なく施術できる | 効果がハッキリしている |
デメリット | 効果がまだ検証段階、効果が施術者によってばらつく
ジェルが必要 |
痛みがある |
効果は同等と言う報告が多いのですが、研究の部位が脇や下腿などの脱毛しやすい部位に限られていたり、対象とする人数が少ない報告も少なくないと言う点でまだハッキリと効果が変わらないとは言えない状況です。
どうしても痛みが辛いと言う方は、メディオスターやソプラノのような蓄熱式脱毛機を選択するのがいいと思います。
*参考文献
- Fiskerstrand EJ, Svaasand LO, Nelson JS.Hair removal with long pulsed diode lasers: a comparison between two systems with different pulse structures.Lasers Surg Med. 2003;32(5):399-404.
- Koo B, Ball K, Tremaine AM, et al.A comparison of two 810 diode lasers for hair removal: low fluence, multiple pass versus a high fluence, single pass technique.Lasers Surg Med. 2014 Apr;46(4):270-4.
- Li W, Liu C, Chen Z, et al.Safety and efficacy of low fluence, high repetition rate versus high fluence, low repetition rate 810-nm diode laser for axillary hair removal in Chinese women.J Cosmet Laser Ther. 2016 Nov;18(7):393-396.
- Wanitphakdeedecha R, Thanomkitti K, Sethabutra P, et al.A split axilla comparison study of axillary hair removal with low fluence high repetition rate 810 nm diode laser vs. high fluence low repetition rate 1064 nm Nd:YAG laser.J Eur Acad Dermatol Venereol. 2012 Sep;26(9):1133-6
- Braun M.Permanent laser hair removal with low fluence high repetition rate versus high fluence low repetition rate 810 nm diode laser–a split leg comparison study.J Drugs Dermatol. 2009 Nov;8(11 Suppl):s14-7.
- (*)Royo J, Moreno-Moraga J, Trelles MA.Clinical assessment of a new 755 nm diode laser for hair removal: Efficacy, safety and practicality in 56 patients.Lasers Surg Med. 2016 Dec 19
- Haak CS, Nymann P, Pedersen AT, et al.Hair removal in hirsute women with normal testosterone levels: a randomized controlled trial of long-pulsed diode laser vs. intense pulsed light.Br J Dermatol. 2010 Nov;163(5):1007-13
- Pai GS, Bhat PS, Mallya H, et al.Safety and efficacy of low-fluence, high-repetition rate versus high-fluence, low-repetition rate 810-nm diode laser for permanent hair removal–a split-face comparison study.J Cosmet Laser Ther. 2011 Aug;13(4):134-7