脂肪吸引は、ダイエットではなかなか細くならない部位の「部分やせ」が可能で、美容クリニックでは、とてもポピュラーな手術です。
施術を受ける方は意外と多くいますし、興味があるという方もいらっしゃると思います。
しかし、手術に抵抗や恐怖心をお持ちの方も多いですよね。
その理由の1つには、失敗したらどうなってしまうのか…という不安があるのではないでしょうか。
そんな方のために、この記事では脂肪吸引で起こりうる失敗例とその対処法、失敗する可能性を低くするためのポイントを解説していきます。
この記事を読めば、どんな失敗例があるのか、なぜその失敗は起きるのか、失敗しないためにはどうしたら良いのかを知る事でき、手術を受ける際の、失敗のリスクを最少にすることができます。手術をお考えの方はぜひ読んで下さい。
脂肪吸引の手術後は、どうしても腫れや内出血が出たり、一時的に硬くなったりします。今回はそのような一時的なことでなく、何か対応しないと改善しない失敗について解説します。
失敗の確率はドクターで違ってきますので、ドクター選びが重要です。
また、ドクターの技術力も関係ありますが、ある一定の確率でどうしても起こる合併症は3章で別に解説します。
1-1.デコボコが出来る
脂肪吸引は小さい傷から人工的に脂肪を吸い出す手術です。かまぼこを切るようにキレイな断面で脂肪が取れる訳ではなく、蜂の巣の穴の様な状態になります。
ですので、多少のデコボコは出ますが、しっかりとケアを行えば気にならない位に改善します。(普通は気にならなくても、マッサージクリームなどを付けてよく触るとわずかにデコボコする程度は出る可能性があります)
しかし、見た目に明らかにデコボコする場合は手術時の脂肪の取りムラが原因で、修正が必要です。
対処法:取り残しがある場合は膨らんでいるところを再度吸引する。凹んでいて、もう脂肪が取れない場合は、他の部位の脂肪を移植する。
1-2.傷跡が目立つ
傷跡は残念ながらなくなりませんが、半年~1年で目立ちにくくなりますし、目立ちにくい場所に作ります。それでも傷が気になる場合はあります。
対処法:傷の状態にもよります。膨らんでいる傷は注射やレーザーで小さくする場合もあります。色だけが気になる場合は塗り薬で薄くなることもありますが、基本的には再手術で切開して修正します。
1-3.効果を実感できない
脂肪の吸引量が少なかったり、そもそも脂肪のあまり付いていない部位は脂肪吸引しても変わらない場合があります。
効果の出にくい部位としては、ほほ、ふくらはぎや背中があります。
対応法:取り残しがあれば再度吸引しますが、1回目よりも難易度が上がります。ふくらはぎ、ほほ、背中は2回目にやっても効果が出ないこともあります。
重要なことは、一番初めの手術時にしっかり効果が出るかドクターとカウンセリングする事です。
1-4.ひきつれ感が残る(動かすとつっぱった感じがする、皮膚がつっぱる)
手術後1カ月は強いひきつれ感があるかも知れません。だいたい、3か月で治まります。長くて半年です。
それ以上続く場合には改善は望みにくいので修正した方が良いでしょう。原因は脂肪の取り過ぎや、浅い部分の脂肪を取り過ぎ、手術後に必要なマッサージの不足があります。
対処法:脂肪を取り過ぎてひきつれている場合には脂肪注入で対応しますが、スジの様になっている場合は修正が困難です。
1-5.取り残しにより不自然なボディーラインになる
脂肪吸引は脂肪を取ればいいと言うだけではありません。ボディーラインを想像しながら強弱を付けて吸引していきます。取りやすい所だけ吸引していると、実際に細くなったけど、ラインがキレイでなく細く見えないなんて事もあり得ます。
対処法:症例写真などをみて、自分の好きなラインで仕上げてそうなドクターを選びましょう。手術後の場合は、再度吸引し、ラインを整えてあげる必要があります。
1-6.左右差が出る
手術するドクターはだいたい右利きか左利きでしょう。無意識に吸引するときにクセが出てしまって左右差が出る事があります。ドクターはそうならない様に意識的に脂肪吸引の手術を行うのが重要ですが、左右差が出る事もあります。極端なものはないでしょう。
対処法:ほとんどは取り残しによる左右差です。再度吸引してラインを整えます。
1-7.皮膚のたるみやシワがでる
脂肪吸引を行う事で、余計に皮膚が伸びてたるむという事はありません。ただし、脂肪がなくなった分が全て引き締まってくれない事があります。年齢、肌のハリ、脂肪を取った量、脂肪吸引した部位にもよります。
特にお腹の前面はたるみが出る事が多いので、手術前にドクターとしっかり相談する事が重要です。
対処法:脂肪吸引によって細くなる事が大きいのであまり気にする人はいません。対応法としては手術後に引き締めレーザー(ラジオ波など)を当てる方法、皮膚自体を大きく切り取る方法がありますが大きな傷となってしまいます。
また、脂肪がなくなる事によってハリがなくなりしわっぽくなる事があります。特にお腹のへそ周り、内ももの部分におこります。
対処法:気になる場合は脂肪注入で対応します。
1-8.皮膚のくすみが残る(色素沈着)
脂肪吸引すると一時的に皮膚の色が茶色っぽくなることがあります。特に内ももで起こりやすいです。6カ月ほどで治りますが微妙に残る場合もあります。また、一部だけ皮膚の近くを吸引し過ぎた場合にも出現します。
対処法:脂肪吸引によって出来たものは対応が難しいです。
1-9.出血量が多く手術が中止になる
脂肪吸引は出血が多い手術ではありませんが、乱暴な吸引法や脂肪吸引を始めたばかりのドクターでは出血量が多くなります。多少であれば問題ないこともありますが、出血量が多くなると手術を途中でストップしたり、まれですが救急搬送なんて事もあり得ます。
対処法:経験のあるドクターを選ぶ事が重要です。もし再手術する場合は2カ月ほど空けて貧血の状態が良くなっているのを確認してから再手術を行います。
2.部位別の特有な失敗
1章と重複する部分もありますが、部位によっても失敗の種類が違ってきます。
2-1.顔の脂肪吸引に特有な失敗
神経麻痺が起こる事がある(口の動きが悪くなる)
手術中の操作で神経を傷つけてしまう事で、神経麻痺が起こります。「いー」や「うー」を行ったときに唇の動きがおかしくなります。見た目に分るので、気になるし不便です。
対処法:神経を修復するお薬を飲みながら経過を見ます。6カ月以内には治ると言われています。
口角の膨らみを吸引し過ぎると、凹んだり引きつれる
特に40歳以上のたるみのある方に起こります。口の周りのもたつきを吸引で解消しようとしたときに起こります。笑うと口角が引きつって、おかしく見えます。
対処法:違う部位の脂肪を移植して対応します。
2-2.お腹の脂肪吸引に特有な失敗
段差になる
お腹の前面はもともと段差のある方もいますし、手術後にもデコボコ、段差など綺麗になりにくい部位です。
対処法:膨らんでしまっているところを再度吸引します。
たるみが出る
他の部位に比べて、引き締まらなかった皮膚が下へと下がって見た目にたるみます。他の部位ではほとんどありません。
対処法:レーザー(ラジオ波)などで引き締めたり、根本的には皮膚を切ってたるみを取り除きますが大きな傷が残るのでそこまでする人はまれです。そうならないためにも手術前の相談が重要です。
しわっぽくなる
産後にお腹がしわっぽくなるように、脂肪吸引でも起こる事があります。特に脂肪を取り過ぎたり、浅い部分の脂肪を吸引し過ぎると起こります。
対処法:手術前のカウンセリングや医師の技術が重要ですが、起きてしまった場合はレーザー治療や、皮膚の切除でないと改善できないこともあります。
2-3.太ももの脂肪吸引に特有の失敗
内ももがシワっぽくなる
内ももの足の付け根部分は、手で言うワキのようにシワになりやすい部位ではあります。吸引し過ぎる事によって術後シワが出る事がります。半年待っても改善しない場合は残ってしまいます。
対処法:対応が難しいですが、脂肪を注入して対応します。
お尻が垂れることがある
お尻やお尻の下を吸引し過ぎるとお尻が下がることがあります。1㎝程度なら気にならないでしょうが、大幅に下がってしまうと見栄えが悪いです。また、下がりはしなくてもバナナ状変形と言って、2段になる事があります。
2-4.ふくらはぎの脂肪吸引に特有な失敗
効果が感じられない
ふくらはぎは体の中でも一番むくみやすく、効果が出るのが遅いです。3か月目から効果が見え始め、6カ月で細さが出てきます。また、脂肪の割合も少なく、脂肪吸引でも効果を感じにくい部位の一つでもあります。
対処法:手術前に脂肪があるかどうかをチェックする事が一番重要です。
3.脂肪吸引の合併症
3-1.血が溜まることがある
手術後10日以内に起こります。手術中の出血量や手術後の圧迫が不十分な事も原因としてあります。注射して吸い出しますが、再び溜まってくる場合もあります。1%以下の確率ですが、喫煙者に起こりやすいです。
症状:ヨーヨーの様にぽちゃぽちゃと水が溜まっている感じがあったり、一部だけ大きく腫れる事があれば手術を行ったクリニックを受診しましょう。
3-2.体液が溜まることがある
血液ではないのですが、体液が吸引した部分に溜まることがあります。報告によって確率は違いますが多くて3%の確率です、384例の手術で0件だったと言う報告もあります。対処法は注射器で溜まった水を吸い出します。下腹部や二の腕、ふくらはぎに多いです。
症状:ヨーヨーの様にぽちゃぽちゃと水が溜まっている感じがあったり、一部だけ大きく腫れる事があれば手術を行ったクリニックを受診しましょう。
“脂肪吸引後に水が溜まるのは合併症です”
脂肪吸引後に水が溜まるのは、良く脂肪が取れている証拠だとか書いてあるページを見かけますが、脂肪吸引後に水が溜まるのはただの合併症です。当たり前ですが、起こらない方がいいのです。
この水が溜まる事をセローマ(seroma)と言いますが、セローマは起きても多くの場合問題なく解決できます。しかし場合によっては以下のようなさらなる合併症・不都合を引き起こす場合があります。
・傷の近くで起きた場合、傷口の感染が二次的に起きる可能性
・皮膚の壊死・障害・色素沈着(シミになる)
・二次的な感染症
・難治性のセローマになる(なかなか治らない)
・度重なる通院への負担
そして、水が溜まると言いますが、これはただの水ではありません。炎症が起こった結果出てくる体液です。ですので、脂肪吸引後に水が溜まると言うのは、脂肪吸引の際に不必要に周りの組織を傷つけたり、手術後の圧迫が足りなかったり、という事が考えられます。
記事の最後に参考にした論文を付けていますが、セローマ(seroma)に関しての原因や対処法に関しても山のように論文や研究がなされています。もし、手術後に水が溜まると言う事が正当な事、良い事であればこんなに対処法や原因の究明について研究がなされない事は明白でしょう。
3-3.感染することがある
1%以下です。傷口の軽い感染、内服薬で治まるものから、入院を必要とするような重症例まであります。
症状:赤み、腫れ、熱感(皮膚が熱を持っている感じ)、痛みが出てきた場合は、手術を行ったクリニックを受診しましょう。
3-4.火傷や皮膚の壊死(腐ってしまう)
火傷は超音波を使った脂肪吸引やレーザーを使った脂肪吸引で起こりえます。また、皮膚近くの過剰な吸引により、皮膚が傷ついて腐ってしまう事があります。これらの傷口は治ってきますが、時間がかかるのと、傷跡が残ります。
火傷はドクターの技術で防げます。皮膚が腐ってしまうのは極まれです。(1%以下)
症状:皮膚が赤くなり、めくれてきたり、グジュグジュと液が出てきます。もしそのようなことがあれば、手術を行ったクリニックを受診しましょう。
3-5.死亡例もある
アメリカの調査では0.02%確率で死亡事故があったと報告があります。これは1990年代の調査ですので現在ではもっと安全になっています。1998-2000年の調査では0件です。
4.失敗の可能性を低くするための注意点
手術前のドクター選びが一番重要です。脂肪吸引の機械で結果の良しあしが決まるというような宣伝を見ますが、そんなことはありません。機械によって値段設定を変え利益を上げようとしているのです。
失敗の確率も効果も全てドクターの腕や術後のケアによります。
4-1.失敗を避けるための手術前の注意点
脂肪吸引の経験が豊富な医師を選ぶ
大手美容外科で指導をしていた立場から見ると、脂肪吸引の手術件数が少なくても100件を超えている医師を選びましょう。件数は直接聞いても大丈夫です。
また、カウンセリングの時に吸引する部位を触って診察しない医師や高い値段の手術ばかりを勧めて来るドクターは要注意です。そういうドクターは手術後のケアもしっかり見てくれない場合があります。
その場の勢いで手術をしない
迷ったら、一旦帰宅し、他のクリニックやドクターとでもカウンセリングする事をお勧めします。同じクリニック内の違うドクターは、言う事が同じ可能性もあるのでお勧めできません。
特に、「今日やれば安くなる」と言う営業には気を付けてください。
どの方法でも失敗の確率も効果も変わらない
脂肪吸引に使用する機械はいろいろありますが、どの機械を使用しても効果は変わりませんので、合併症や失敗の頻度も変わりません。逆にレーザーや超音波を使う事で、火傷の可能性が出てきます。
4-2.しっかり効果を出し、きれいに仕上げるための注意点
専用の圧迫下着はなるべく継続して着用する
手術後3か月間は毎日着用しましょう。日中出来ない日があっても、家にいる時や寝ている間は着用しましょう。
マッサージやストレッチをしっかり行う
脂肪吸引後は一時的に硬くなりますので、マッサージやストレッチを1日2-3回、5分ほど行いましょう。
傷口はこすったり刺激を与えない
傷口は出来るだけ触らない方がキレイに治ります。クリニックによっては3か月間くらい傷口保護のテープを出してくれます。
5.脂肪吸引手術後の修正方法とは
脂肪吸引の失敗の修正法として、代表的には以下のような方法を組み合わせて行います。
- 再度脂肪吸引する
- 脂肪注入する
- レーザー(ラジオ波)などを当てて皮膚を引きしめる
状況に応じてこれらを使い分けて修正します。
6.まとめ
脂肪吸引による失敗の頻度はそれ程高くなく、多くの方が脂肪吸引で満足されています。しかし、中には手術後の状態に悩まれている方もいます。手術前に信頼できるドクターを選び、しっかりアフターケアを行うのが失敗しないコツです。
参考:Dixit V:Unfavourable outcomes of liposuction and their management.Indian J Plast Surg. 2013 May;46(2):377-92
Khanna A:Avoiding unfavourable outcomes in liposuction. Indian J Plast Surg. 2013 May;46(2):393-400
Eric Swanson:Prospective Clinical Study of 551 Cases of Liposuction and Abdominoplasty Performed Individually and in Combination. Plast Reconstr Surg Glob Open. 2013 Aug; 1(5): e32.
Tufan Egeli. Ali İbrahim Sevinç, Seymen Bora. Microporous Polysaccharide Hemospheres and Seroma Formation After Mastectomy and Axillary Dissection in Rats. Balkan Med J. 2012 Jun; 29(2): 179–183.
Eric Swanson. Seroma Prevention in Abdominoplasty: Eliminating the Cause. Aesthet Surg J (2015) 36 (1): NP23-NP24
7.追記