痩せるために脂肪を落としたいのになかなか痩せられない…という方は多いですよね。
脂肪には皮下脂肪と内臓脂肪があり、内蔵脂肪が貯まっている状態が続くと、様々な病気を引き起こすリスクがあります。
具体的には、肥満によって高血圧、高血糖といった状態が起きやすくなってしまいます。また、内臓脂肪から分泌される物質の量が変化して、それによって動脈硬化が引き起こされ、やがて心筋梗塞や脳梗塞、糖尿病など命にかかわる病気の発生へとつながっていきます。
「太っているけど特に健康に問題はない、自分はまだ大丈夫」と思っている方でも、自覚症状がないだけで、身体の中では実は症状が出始めているかもしれません。
そこで今回は、ダイエット外来を行っている現役医師が、確実に脂肪を減らすための基礎知識をお教えいたします。脂肪を正しく減らすために知っておくべき脂肪の知識やメカニズムを理解してから自分に合った肥満解消法を試みましょう。
目次
1.皮下脂肪と内臓脂肪の違い
1-1.内臓脂肪と皮下脂肪では付く場所が異なる
皮下脂肪は皮膚の下にある脂肪、内臓脂肪はお腹の中、腸の周りにある脂肪です。
引用:日本消化器病学会
男性ではウエスト85㎝以上、女性では90㎝以上は内臓脂肪過多の可能性が大きいので減量を試みるべきです。体や顔は痩せているのに、お腹だけ出ている場合などは内臓脂肪による肥満の可能性が強いです。
1-2.内臓脂肪と皮下脂肪では落としやすさが異なる
内臓脂肪は食事制限や運動で減りやすく、皮下脂肪はなかなか減らない脂肪です。
なぜなら、エネルギーの蓄え方が違うからです。
- 内臓脂肪:短期的なエネルギーの増減によって増えたり、減ったりする
- 皮下脂肪:長期的なエネルギーを蓄える
1-3.男性と女性では内臓脂肪の付き方が異なる
男性では内臓脂肪が付きやすく、女性では皮下脂肪が付きやすいと言う特徴があります。しかし、閉経後は女性も内臓脂肪が付きやすくなってくるので、性ホルモンと関係があるのではないかと考えられています。
2.王道だけど効果的に脂肪を減らす3つの鉄則
脂肪を減らすために、痩せるのに特別な裏技は存在しません。摂るカロリー(食事量)を減らすか、運動して消費カロリーを増やすかのどちらか、もしくは両方です。
一般的なダイエット法も摂取カロリーを減らすか、消費カロリーを上げるかのどちらかに分類されます。
また、内臓脂肪を減らす方法などと紹介されているものもありますが、基本的に内臓脂肪の方が皮下脂肪よりも落ちやすいので、どの方法でも皮下脂肪よりも内臓脂肪が先に落ちます。
2-1.減量のメカニズムを知り、現実的な目標を設定する
1gの脂肪を減らそうと思うと7Kcalの消費が必要です。
例えば、1日の必要カロリーを2100Kcalとすると、理論上は最大で300gの減量を1日で行う事ができます。減量初期にはもっと体重が減ることがありますが、これは溜まっていた水分も一緒に減っている事が原因で起こります。
しかし、長期的に1日300g以上の減量を続けると筋肉が減ってきますので、現実的には1日70-120gの減量が適切です。1カ月にすると2-4kgの減量です。
2-2.カロリーなどの計算し、アプリで管理する
減量で必要になるのは、総カロリーを減らしながらたんぱく質、ミネラル、ビタミンを十分摂取する事です。実際、毎食のカロリー数を計算するだけでもかなりの労力が必要です。
しかし、最近では携帯アプリで食事内容を入力すると大体のカロリー数を教えてくれるものがあります。これらを使用してみるのはいい方法です。1日に必要なカロリー数は以下を参考にして下さい。
おすすめのカロリー管理アプリ2選
あすけんダイエット 食事記録・体重・カロリー管理:「きちんと食べて健康的に痩せたい!」そんなあなたのために”栄養士がアドバイスする”ダイエットサポートアプリ
ダイエット・体重管理アプリなら【楽々カロリー】:外食メニューやコンビニ商品を含む全60,000件以上の食品データからカロリー計算できるようです
適切な1日のカロリー数の求め方
①まず、今まで食べていた物から1日に摂取していた総カロリー数を出します。例えばそこから700Kcal減らすと1日で脂肪が100g減る事になります。計算上は1カ月で約3kgの減量に相当します。ですので、1ヶ月3kgの体重減少を目指す場合は今の摂取カロリーから700Kcal低くしたものが理想となります。
②基礎代謝を維持するためには体重1kg当り25-30Kcal必要です(1日5000歩も歩かない人)。身長(m)×身長(m)×22が標準体重ですので、標準体重に25Kcalをかけたものが1日の目標Kcalになります。身長170cmの人なら、1.7×1.7×22×(25-30)=1589-1907Kcalです。
食事内容のポイント
最近は糖質制限ダイエットが流行っていますが、確かに糖質抑えめにした方が効果的です。制限し過ぎるのも食事が難しくなるので糖質でのカロリーが40-50%が妥当ではないでしょうか。
また、たんぱく質量を1日70g以上確保するために赤身肉、青身魚、貝類を摂取しまし、緑黄色野菜を少なくとも1日100g程度とり、きのこ、海藻、種実類の料理を1日1回程度心がけましょう。
単品ダイエットは危険なので行わない
単品で必要な栄養素を十分に備えた食品は存在しません。長く続けるとビタミン、ミネラル、たんぱく質の欠乏状態になります。
めんどくさい人には置き換えダイエットも有効
医学的に検証されているものにマイクロダイエットやオベキュアと言うものがあります。オベキュアは医療機関での販売になりますが、マイクロダイエットはネットでも購入可能です。
医師の指示なしで行う場合は3食のうち、1食を置き換えるようにします。これを使えば必要なビタミンやミネラル、たんぱく質もそれなりに摂取できますので、後の食事ではカロリーだけ考えればいい事になります(炭水化物、糖質の取り過ぎに注意しましょう)
2-3.継続して運動する
激しい運動を行ってもいいのですが、なかなか続けることが難しいです。「やや楽」~「ふつう」程度の運動を継続する事が重要です。
運動だけで体重を減らす事は難しく、必ず食事制限と一緒に行わなければ効果が不十分です。消費カロリーと運動の目安です。ご飯1杯で約230Kcalですので、運動だけで痩せると言うのが難しいのがお分かり頂けると思います。
脂肪の燃焼効果は10分程度の運動でも認められますが、1回10~30分の運動をお勧めします。頻度としては週3~5日で行えるといいでしょう。なぜなら、例えばインスリン抵抗性の改善と言うのは運動後2日程持続しますが、その後は弱まってしまいます。
特別時間が取れない方は、日常生活でも運動量増ふやことは可能です。
- 歩行
- 床掃除
- 庭仕事
- 洗車
- 階段
- 子供と遊ぶ
- 風呂掃除
は、安静時の3倍のエネルギーを消費できます。運動はストレス発散にもなるので継続的に続けましょう。
3.部分痩せは出来るのか?
女性であれば特にここの脂肪だけ落としたいと思ったこともあるでしょう。しかし、脂肪吸引などの医療的な方法以外で部分痩せを実行する方法は確立していないと言えます。
なぜならば、取り過ぎたエネルギーが脂肪として溜まっていきますが、この時にどこの部分の脂肪につきやすいか、付きやすところがあるのであればどうしてなのか?という事自体が分っていないのです。ですので、ある部分の脂肪だけを落とそうとしてもその正確な方法と言うのは分りません。
しかし、細くしたい部分の筋肉を鍛えて引き締める事や、マッサージでむくみを取る事は外見上の部分痩せにつながります。現在、部分痩せとして紹介されている方法はこのどちらかでしょう。
むくみを取るマッサージの方法としては、現役エステティシャンの執筆した「プロのエステティシャン推奨!自宅でできる最高のダイエットマッサージ」をお読みいただくと詳しい方法が分ります。
4.リバウンドする理由
体重の増減は基本的に入ってきたエネルギーと消費するエネルギーの差によります。ですので、ダイエットのために一時的に食事量を減らしても、体重が減った時に油断して元の食事と同じカロリー摂取に戻してしまえば体重も徐々に戻ってきます。
また、一番困るのがダイエットによって筋肉量が減る事です。食事を制限して痩せていくのは良いのですが、食事内容で十分なたんぱく質を確保しなければ筋肉もエネルギーとして使われていきます。たんぱく質は1日に70g以上は必ず確保するようにします。
栄養素の偏ったダイエットでは、筋肉量が減ってリバウンドしやすい身体、今度は痩せにくい身体になっていきます。
単純に筋肉1kgだけの消費カロリーで計算すると13Kcalにしかならないようですが、除脂肪量というもので考えると1日50Kcal近いプラスになってしまいます。1年で2.5kgほどの体重増加に相当しますし、今度痩せる時は大変です。
参考:国立健康・栄養研究所
5.脂肪吸引で肥満は解消できるのか
脂肪吸引とは皮膚に5-7㎜の傷を作って皮下脂肪を吸い出す手術です。美容目的に行われ、見た目が細くなります。
脂肪吸引で吸引できる脂肪は皮下脂肪だけで、内臓脂肪は吸引できません。見た目の細さは改善できますが、肥満の解消には繋がらないのです。しかし、皮下脂肪は長期的なエネルギーを蓄える細胞で食事制限やダイエットで減りにくいので脂肪吸引で見かけだけ変えると言うのは手っ取り早い方法です。
脂肪吸引したところの脂肪の数は減ります。脂肪細胞は増えることはないので、多少大きくなることはあっても元に戻りにくいと言われてきましたが、脂肪細胞は増える事が分ってきています。
脂肪細胞の大きさには限界があります、その限界を超えてエネルギーを蓄える場合は脂肪の数が増えるしかないのです。 とはいっても、脂肪吸引で脂肪細胞の数は減っていますので、体重が増えない限り元に戻ってしまうという事はないと考えます。
6.サプリメントとダイエット
サプリメントだけ飲んでいれば痩せるというものはありません。サプリと運動を組み合わせ脂肪を燃やしやすくすると考えられているものはありますので紹介します。
6-1.効果があると考えられているサプリメント
L-カルニチン
運動の時に体脂肪を効率よくエネルギー源として利用させることができ、体脂肪の減少に結びつくとされています。
カプサイシン
カプサイシンを摂取した時の食後の熱産生は多くの人で高まると考えられています。しかし、からみ成分が強いことから摂取が難しかったのですが、味の素と京大の開発でカプシエイトというものが出てきました。
京都大学による成人男性12名を対象とした研究では体重減少作用が確認されています。
共役リノール酸
体内での熱産生を高めるとされています。共役リノール酸の効果を引き出すためには、分解された脂肪が再び元に戻らないように運動を併用することが重要です。
6-2.絶対に使用してはダメなサプリメント
最近では、インターネットでなんでも手に入る様になっております。海外の怪しげなサプリメントも入手可能ですが、以下のものは使用しないようにしましょう。
エフェドラ
サプリメントとして使用されていた歴史がありますが、死者も出るという重大な報告が上がっています。日本ではエフェドラ製剤は販売できませんが、海外から個人輸入代行などで手に入ります。決して、エフェドラの入っているものを使用しないでください。
6-3.長期の使用を控えた方が良いサプリメント
ガルシニア
2002年厚生労働省はガルシニアを継続的に摂取する事への注意喚起を出しております。使用しない方が無難です。
*残念ながら飲むだけで痩せると言う薬はありません。世界各国の巨大製薬メーカーがやせ薬に関しては研究をしていますが、飲むだけで痩せると言うものは出来ていないのが現状です。まして、サプリメントは補助食品ですのでしっかり食事管理や運動と同時に行わなければ効果も乏しくなります。
7.太りやすい人は遺伝子と環境で決定している
肥満に関して遺伝的要因が25%と言われています。
β3アドレナリン受容体
この遺伝子に変異がある日本人は3人に1人と言われており、正常者に比べて基礎代謝が200Kcal低くなると言われています。
UCP1
日本人の数十%がこの変異を有し、基礎代謝が100Kcal低くなります。
β2アドレナリン受容体
脂肪の分解に関与し、この遺伝子に変異があると基礎代謝が逆に300Kcal高くなると言われています。
これらの遺伝子はネットから申し込み自宅で検査を行う事も出来ます。興味深い所ですが、これらの遺伝子に変異があったからと言って、何か有効なダイエット方法があるわけではありません。
このように一つ一つの遺伝子でも研究が進んでいますが、肥満はどれか一つの遺伝子の原因のみで起こる訳ではなく、色々な遺伝子による原因や環境・生活習慣によって起こります。また、ストレスなどの心理的な側面も影響しています。
8.褐色脂肪細胞とはエネルギーを消費してくれる細胞
脂肪細胞と言えば通常は白色脂肪細胞を指します。これは脂肪をエネルギーとして貯めておいたり、ホルモンを分泌したりする作用があります。
これとは別に褐色脂肪細胞と言うものがあり、細胞の中に脂肪を含んでいます。褐色脂肪細胞は白色脂肪細胞の様に脂肪を貯めこんでおく細胞ではなく、むしろ脂肪を消費する細胞です。
褐色脂肪細胞は熱を産生する働きを持っており、筋肉の100倍近い発熱能力があると言われています。残念ながら新生児のころに最も数が多く、成人になると少なくなってしまいます。特に40代以降は急激に減少するとも言われ中年太りの原因の可能性かも知れません。
9.まとめ
いかがでしたでしょうか?どのようなダイエット方法も食事やカロリーを減らすか、運動をすると言うものです。ですので、この記事での基本的な減量の仕組みを理解していただき、流行に流され、一時的な減量やリバウンドを繰り返すのではなく、きちんと理にかなった方法を継続するようにしましょう。