ボトックス注射は主に、注射することによって筋肉をストップさせてしわを取ることに使われます。筋肉を止めるといわれると何だか怖い感じもしますが、病気にも使われるようになってきているお薬ですし基本的には安全性の高いものです。
しわ取りのほか、筋肉を小さくし細く見せたり、汗を止めたりすることもできます。
その使い方や効果、クリニックの選び方について具体的に見ていきましょう。
*ボトックスとはアメリカのアラガン社が作っているボツリヌス菌の製品です。アラガン社以外のものはボトックスとは言いませんが、一般の方ではボトックスという商品が有名すぎるため、全ての商品をひっくるめてボトックスと言う事が多いです。
目次
1.ボトックス注射の効果と部位
ボトックス注射でよくおこなわれる方法は3つあります。
- 顔のしわ取り
- 筋肉に注射して、エラの縮小や小顔・ふくらはぎを細くする
- 主に脇に注射して汗を止める
これらについて以下で説明します。
1-1.しわ取り
しわのある部分に注射してその部位の筋肉をストップさせます。動かない筋肉は弛緩(しかん)して伸びるので皮膚も伸びてしわが取れます。また、動かなくなるので表情に伴うしわも出来なくなります。
しかし、どこの部位でも打てるわけではありません。頬など動きが止まると困る部位には打てないのです。(薄いボトックスを打つ場合はあります)
具体的には以下の部位のしわを取ることが多いです。
- おでこ
- 眉間
- 目尻
- 目の下の外側
- 鼻根(目と目の間の横じわ)
- 鼻の下
- あごの梅干じわ
これらの部位に注射することにより、著名にしわを減らすことができます。
下の写真のように表情の動きによるシワに対して大きな効果がありますし、表情を作っていない時でも、シワが改善します。
あまりに深いしわにはヒアルロン酸注射との併用も効果的です。
注)ヒアルロン酸注射との違い
ヒアルロン酸注射 | ボトックス注射 | |
概要 | ボリュームを増やすことによって大きなしわを伸ばす | 筋肉に作用し筋肉を止めることによって表情じわを伸ばす |
向いているしわ | ほうれい線 | 目尻 |
ゴルゴ線 | 額 | |
口角のたるみ | 眉間 | |
深い眉間や額のしわ | ||
向いていないしわ | 細かい表情じわ | 筋肉がストップすると困る部位(頬など) |
ヒアルロン酸注射はボリュームを増やしてしわを埋めるものです。
ヒアルロン酸注射は動きによる表情じわには不向きです。また細かいしわにも使用しにくい場合があります。それは、ヒアルロン酸注射自体がボリュームを増やすものだからです。
表情じわでもあまりに深くなりすぎて、窪みになっている場合はボトックス注射との併用でより効果が出る場合があります。
1-2.エラ・小顔・足痩せ
BTX注射は筋肉をストップさせますので、やや大きめの筋肉をストップさせることにより、筋肉を休止させ萎縮(痩せ)させます。ちょうど骨折してギブスしている最中に細くなっていくのと同じです。ただし、筋肉がストップすることにより日常生活に支障が出る部位には注射できません。
ですので、咬筋と呼ばれるエラの部分に打つことによって小顔効果を得る。ふくらはぎに打って細くするという2パターンがほとんどです。
上の写真は私がエラのボトックス注射をした変化です。矢印の部分が小さくなっているのが分ると思います。ボトックスの効果は数日で出ていますが、筋肉が小さくなるまでに2-3週間のタイムラグがあります。
食いしばりや歯ぎしりの強い方は歯に負担がかかるという事で歯科の先生に勧められて来院される方も少なくありません。
ふくらはぎボトックスの効果
ふくらはぎにボトックス注射を行った1か月目の経過です。1回のみの注射ですが細くなっているのが分ります。この方の場合はまだ筋肉が減らせそうですので、もう一回注射すればより効果が出る可能性があります。
1-3.脇汗や頭の汗
脇汗に限らないのですが、皮膚に浅く注射することにより汗を止めることができます。脇・頭皮・デリケートゾーン・手のひらや足の裏が適応です。
脇汗は著名に減った感じを受けれると思います。額は打つ量や範囲にもよりますが、半分くらい減る印象でしょう。手のひらや足の裏も打てますが、非常に痛みが大きいです。
2.ボトックス注射の持続期間や安全性
ボトックス注射は効果が出はじめるのは早い人で2日ほど遅い場合は1週間くらいかかります。
効果が消失するまでは平均4か月と言われていますが、定期的に打ち続けると効果が長く続くようになる人と短くなる人の両方のパターンがある様に感じます。
安全性に関して、基本的に安全であるし、不都合なことが起きてもボトックスの効果が切れるときには不都合な作用も切れるというのがこのお薬です。
3.ボトックス注射のリスク・副作用
基本的には安全で副作用の起こる確率は高くありません。たまにある副作用としては、
眉間の表情皺を対象とした使用成績調査において、安全解析対象 症例595例中、 7例(1.2%)に副作用が報告されました。
- 注射 部位の痛み2例(0.34%)、
- 帯状疱疹1例(0.17%)
- 口の違和感1例 (0.17%)
- 筋萎縮1例(0.17%)
- ニキビ1例(0.17%)
- アレルギー性皮膚 炎1例(0.17%)
- 湿疹1例(0.17%)
その他、1-5%の頻度で
- 頭痛
- 眉間やおでこに打った場合に、目が重たくなる、目を開け辛い
数が少なく頻度不明ですが
- 目の近くに打つと、眼球運動に異常をきたす
- 頻度は極めて少ないですが、首やその周辺では、物が飲み込み辛いや呼吸困難
など、あります。
(ボットクスビスタ 添付文書より:http://vst-beauty.jp/botoxvista/professional/pc/about/pdf/botoxvistainsert.pdf)
また、
- 目尻に打った場合に、表情が硬くなると感じる方がいらっしゃいます。
4.ボトックス注射の上記以外の使い方
上記以外に美容目的ではやや特殊な部位の注射があります。
- 首の横じわの解消
- 首の縦じわの解消
- ほうれい線の軽減
- 口角のリフトアップ
- たるみや顔全体の小じわの軽減として施術される「マイクロボトックス」
(薄い濃度のボトックスを顔全体的に注射し、リフトアップ・小じわの改善に効果があるとされます。) - 小顔、ふくらはぎ以外の筋肉縮小目的にも応用しようとしている施設もあります。
5.ボトックス注射の費用
先ほど少し触れましたが、ボツリヌストキシンをアメリカの会社が作ったものが「ボトックス」です。イギリスの会社で「ディスポート」というものを作っている会社があったり、韓国の会社があったりします。「レジェノックス」や「ニューロノックス」というものです。
同じコーラでも「コカ・コーラ」と「ペプシコーラ」が違うようなものです。
実際に同じボツリヌストキシンですのでそれほどの違いはないと思います。
しかし、アメリカのアラガン社が作っている「ボトックス」は、その品質管理などが認められ、眉間・目尻の表情じわに対して、国内で唯一製造販売承認を得ています。(正確には日本で作っているものは「ボトックスビスタ」という名称です)
それゆえアラガン社の「ボトックス」はコスト面では高くなっています。
アラガン社のボトックスで1部位:20000円-50000円
その他の会社のもの:7000円-15000円
が、多い価格帯だと思います。
6.効果を最大限にするためのクリニックの選び方
ボトックス注射は人によっても効果の出方が違うことが多いです。
初回、強く効きすぎたなら次回は弱く注射したり、効果が弱かったなら次回は強めにしたり、その人それぞれに合わせて注射していく必要があります。
注射自体に高度な技術を要するものではありません。
だからこそ、いつも同じ医師に注射してもらうのは良い方法だと思います。
ヒアルロン酸注射の項目でも書きましたが、ホームページからだけで医師の技術や人柄を評価することは非常に困難です。
何度か通ううちにあなたに最適な打ち方を見つけてくれる医師がいますので、初回の効果がいまいちだったから医師やクリニックを変えるのではなく、2-3回は通ってみてください。また、前回の状態や要望をきちんと伝えるようにしてください。
ただし、以下の事に注意してください。
- やたらと高いものを勧めてこない
- 事前に他のクリニックの料金と比較する
7.まとめ
ボトックス注射は簡単で効果の高いものです。筋肉を止めるとかボツリヌス菌から作っているなどを聞くと怖い感じがしますが、そんなことはありません。
全く副作用のない医療行為は存在しませんし、ボトックス注射の副作用は頻度的には少ないですので一度注射してみれば効果の高さを実感していただけると思います。