表ハムラ法や裏ハムラ法は100%再発するからやるな!
という動画が流行っているそうですが、実際にはどうなのでしょうか?その情報を見てすでにハムラ法を受けられた方や、これから受けようとしている方は不安に思ってしまったかもしれません。
ただ、全く不安になる必要はありません。
その理由を今回はハムラ法の再発に関して論理的に説明し、また、ハムラ法はなぜ再発しにくいと言われるかを併せて解説します。
目次
1,ハムラ法とは
ハムラ法とは目の下の膨らみを修正してきれいにしてあげる手術法です。
多くの場合は膨らみの下に凹みがあるので、この凹みも一緒に修正してあげることができます。
手術法のメインとしては、下の図のように突出して膨らんだ脂肪をさらに下へ移動して骨の上に縫い付けます。
2,ハムラ法は100%再発するという医師の主張
100%再発するという医師の主張には以下のような3つの論点がありました。
- たるみの位置と骨の位置は微妙にずれており、元々骨よりも下側にたるみが来ているので移動しても術前と変わらない
- 出てきたものは元に戻すか、切除しなければならない
- 上を向いた時に膨らむので、それは再発だ
まとめると以上のような3点なのですが、これらに対する解説をしていきたいと思います。
2-1,たるみは骨よりも下側まであるのだから再度骨の上に移動しても無意味
事実上記のようにたるみの位置と骨の位置はズレています。内側と中央部、外側でもその距離は変わってきますが、数㎜のズレが確認されています。
常識の話なんですが、「皮膚から見た脂肪の境目(膨らみ)」と「骨の位置」がズレていて、骨の位置よりも目の下の膨らみと凹みの境目部分(tear troug)は下にあります。
2009年目の下の解剖について詳細に書かれたHaddock先生の文献にもありますようにそんな事は皆知っているのです。
「Any surgical intervention aimed at correction of the tear trough and lid/cheek junction must extend significantly below the infraorbital rim because these deformities extend at least 4 mm below the arcus marginalis at the rim.」
「tear troughや頬と目の下の接合部(要するに目の下の窪み部分)を修正する手術は、これらの変形が骨の縁より少なくても4mmは下にあるため、骨の縁より広い範囲で手術をしなければならない。」
そして、ハムラ法はそのズレている境目よりもより遠方に脂肪を移動固定する手術なのです。
そしてここに、脂肪切除ではダメな理由があります。
この境目(膨らみ)が骨よりも下にあるからこそ脂肪切除(脱脂)は脂肪にカバーされていた骨の縁を露にするので、骨ばったように見える原因になるのです。
骨の縁の位置と見た目の境目(窪み部分)がズレているからこそ、脱脂はあんまりなのです。逆なんです。
ここで一つ疑問が湧いてくる方もいると思います。
年齢を重ねれば膨らみ部分も下がって、より下の方まで手術する必要があるからできないじゃないか?などと言う疑問が湧いてきそうですが関係ありません。
2007年Val Lambros先生が様々な人の写真から目の下の老化による変化を研究しています。その結果、「目の下の凹み部分(接合部)は実際には下降してはおらず、前後方向へのボリュームの変化による影、薄くまた色が濃くなった皮膚がコントラストを強める」としています。
2-2,出てきたものは元に戻すか、切除しなければならない
これはなぜそうなのか?理由が述べられていないので根拠が不明です。
目の下のたるみはヘルニアなので、椎間板ヘルニアのように切除するか、脱腸のように押込んで出ている部分を閉じるべきという主張なのですが、別に他の部位で行っているから同じようにしなくてはならない事もないし、そもそも上記二つも「切除」と「押し戻す」で違う方法を採用しているわけです。
また、美容の手術ですので綺麗にすることを目的としており、元の状態に戻すのが正解という訳ではありません。ちなみに、「切除する」、「押し込んで戻す方法」はすでに過去に行われた方法です。
この言葉も先ほどのHaddock先生の文献からの引用です。
「As aesthetic surgeons, however, our interventions need not be physiologic, provided they work.」
「しかしながら美容外科医の治療は、それが機能を損ねない限り、生理的である必要はない」というような意味になるかと思います。
一般的に広く行われているハムラ法ですが、機能的に問題があるならばすでに広く知れ渡っていることでしょう。
2-3,上を向いた時に膨らむので、それは再発だ
これはもはや反論以前の問題ですが、、、
上を向いた時に目の下はやや膨らみ、伏し目にするとやや凹みます。
生理的なもので決しておかしなものでも、老けて見える、疲れて見える要因でもありません。上を向いた時にもフラットな状態になる程に脂肪を切除してしまうと、正面視の時は窪んで見えます。特に年月が経つにつれてひどくなる可能性があるので絶対にそこまで脂肪を切除してはいけません。
以下の動画をみてください。裏ハムラ法の手術後です。伏し目の時はやや凹み、上を向くとやや膨らみ、自然な範疇に納まっているのが分かると思います。
3,ハムラ法は再発するのか?
ハムラ法は再発しにくいとは言われます。私もそのように思いますが理由としては、
- ・通常の脱脂は眼窩隔膜後方アプローチが多く、前方の弱い部分がそのまま残る。
ハムラでは眼窩隔膜の分厚い部分(cpfも付いている部分)で脂肪をカバーできる - ・脂肪を骨の上に移動することで膨らみを持たせるため、多少脂肪が出てきたとしても目立たない。
というのがあるのではないかと考えます。
3-1,厚い膜で覆うとは何か?
最近のハムラ法は脂肪を移動するとともに脂肪を包んでいる膜の硬い部分を一緒に移動して覆います。
手術をしていると分かりますが、下の図の柔らかい部分(Lower orbital septum)から脂肪が突出してきます。上の硬い部分(Upper orbital septum)で覆ってやるだけでもそれなりのカバー力があるのです。
reinforced=強化されたとありますね。
*引用:Bryan C. Mendelson, MD. Fat Preservation Technique of Lower-lid Blepharoplasty. Aesthetic Surgery Journal, Volume 21, Issue 5, September 2001, Pages 450–459
これによって今後のたるみによる突出を予防できるのではないかという考えです。
このように考える根拠というのは以下のような例があります。
ハムラ法ではなく、脂肪を硬い膜の部分で押し戻す手術です。
膜のリペアによる手術で①Mendelsonは3年間の経験で再発は1例。
②delaPLAZAは2年間の経験で32例の経験で再発は1例、
③Sensozは眼窩隔膜という表記だが、平均5年間の経過観察で再発はなかったとしている。
特に③に関しては脂肪切除を行っていない。①②に関しては平均観察期間不明。という報告があります。これらは皮膚切開のアプローチです。
以上より、目の下を覆っている膜を変化させるだけでも、つまり硬い膜で覆い直してあげるだけでも、脂肪を押し込んでおく効果がある事が分かります。
また、Parsaは片側を通常の脂肪切除、もう片側をCPFによるリペアで手術した経過を発表しています。
平均11年の経過観察で脂肪切除の場合8/26(30.8%)CPFリペアの場合2/26(7.7%)で再発が起こったとしています。CPFの場合は外側のみの再発。
以上より裏ハムラ法で修復する場合もCPFでカバーしながら脂肪を移動したほうが再発を防止できるのではないかという考えです。
外側の部分は膜の弱い部分でカバーが及びにくい部分です。
3-2、多少脂肪が出てきたとしても目立たない
脱脂と違い裏ハムラ法では窪んでいたところに膨らみを持たせます。なので目の下が凹み+膨らみへと変化していく曲線になるのです。
この凹み部分が仮に再発してやや膨らんだとしても凹み部分が修正されて膨らんでいるので目立ちにくいと考えます。
4,まとめ
とはいえ、残念ながらハムラ法に限らず目の下の手術法でまとまった人数を長期間追跡して調べた報告というのはありません。これは長期の追跡が難しいからです。目の下の手術以外でもそうです。
0%か100%かというのは非常に浅はかな議論で、本来はどの程度か(%)?など考える必要や調べる必要があります。
ちなみに以下はハムラ医師が論文内で提示している1例ですが10年の経過です。膨らみが再発しているように見えるでしょうか?
引用:ST. Hamra, M.D.The Role of the Septal Reset in Creating a Youthful Eyelid-Cheek Complex in Facial Rejuvenation. Plast. Reconstr. Surg.113: 2124, 2004.
いずれにせよ、ハムラ法を行おうとしてる方や既に手術を受けられた方は、心配になったり後悔したりする必要は全くありません。
参考
Omer sensoz, M.D.Septo-orbitoperiostoplasty for the Treatment of Palpebral Bags: A IO-Year Experience. PLASTIC AND RECONSTR CTNE SURGERY, May 1998 Vol. 101, No. 6
Parsa AA.Lower Blepharoplasty with Capsulopalpebral Fascia Hernia Repair for Palpebral Bags: A Long-Term Prospective Study. Plast. Reconstr. Surg. 2008.Apr;121(4):1387-1397
Mendelson, B. C. Herniated fat and the orbital septum of the lower lid. Clin. Plast. Surg. 20: 323, 1993.