
ハムラ法、裏ハムラ法でORL(リガメント・靭帯)は切ってもいいのでしょうか?たるみませんか?
などの質問を受けることがあります。結論大丈夫です。
よく分っていないアンチハムラ法医師がそのような主張をしているようですが、ORLとは何なのか?ちょっとマニアックに解説していきます。
ORLとは?
ORLはOrbicularis Retaining Ligamentと呼びます。
ORLは目の下の骨より上の部分と下の部分を隔てるように存在する膜のような構造物です。
リガメント(Ligament)を直訳すれば「靭帯」ということになりますが、肘や膝の重要関節部分にあるような靭帯ではありません。
構造的には内側では筋肉(眼輪筋)中央から外側では脂肪層に沿って存在します。(正確な表現が難しい)
違うい方をすれば「眼輪筋は目をぐるっと囲むように存在しますが、目頭の部分では深部に向かい骨に直接付着します。これは目頭の部分で、中央付近では眼輪筋は直接骨には付着せずに、ORLを介して連続性を保つようになります。また眼輪筋と骨の間にSOOFと言われる脂肪が介在しています。」のような感じです。
左が鼻側、右が目尻側です。赤い筋肉と黄色い脂肪が見えますがORLはハッキリと目で認識できるような、皆さんが想像するような靭帯とは違います。
A R. Muzaffar. Surgical Anatomy of the Ligamentous Attachments of the Lower Lid and Lateral Canthus.
ハムラ法でORLが重要な理由
ハムラ法は目の下の膨らみ(脂肪)を骨の上に移動する方法ですので、ORLを超えて骨の上に脂肪を移動しないといけないわけです。
ですのでORLを切開してスペースを作り、そこに脂肪を移動します。ORLを処理せずにハムラ法は成立しません。
切開するといっても目の下180度全部切開するわけではなく、時計でいうと4時から8時程度の範囲を切開して脂肪を移動することになります。
ORLを切開しても大丈夫なのか?
簡単に考えれば20年以上前からハムラ法が行われているので、今さらORLを切ったら弛むなど言う医師もどうなんでしょう?と思いますが、
実は裏ハムラ法の後に表情などがどのように変化するかを研究した先生がいます。
105人の患者さん、平均年齢41歳を平均31か月(12-53か月)の観察なので術後十分に時間経過した後です。
この研究は表ハムラ法の場合は変数が多くなるため裏ハムラ法での観察となります。
手術後は
- 平常時、笑顔時の目の下の凹み(引き込み)が改善した【tetheringと記されています】
- 笑った時の頬と下瞼の境界が上昇して若々しく見える
- 眼輪筋の引き込みが弱くなることで目尻のシワが改善した
などという事が観察されてます。
Chin-Ho Wong 1, Bryan Mendelson. The Long-Term Static and Dynamic Effects of Surgical Release of the Tear Trough Ligament and Origins of the Orbicularis Oculi in Lower Eyelid Blepharoplasty. PRS.2019 Sep;144(3):583-591
術前後の写真では笑う力や笑い方が必ずしも一致せず、評価も難しいかとは思いますが、少なくてもおかしくなるという事は考えにくいという事がお判りいただけたかと思います。
まとめ
ハムラ法や裏ハムラ法においてORLは切開しても問題ないもので、そもそもORLを切開しないとハムラ法は成り立ちません。
目の下の手術を考えている方にとって、ORLがどうのこうのと手術選択で考える必要はありませんので気にしなくて大丈夫です。
“補足”
ORLが目の下と骨の部分を隔てていると書きましたが、正確には骨のフチより数㎜下にORLは付着します。ですので骨の位置と目の下のたるみの位置が少しずれるのです。